杉野研の永井 瞭氏、カリフォルニア大学アーバイン校滞在報告
物性研究所杉野研の永井 瞭氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して、カリフォルニア大学アーバイン校に10月7日から11月21日まで滞在し、機械学習手法を用いた密度汎関数構築に関する共同研究を行いました。
このプログラムは2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。
杉野研究室M2 永井 瞭
概要
自身の研究テーマは機械学習という情報科学由来の手法と、計算物質科学において重要な手法である密度汎関数を融合させたものです。しかし、このような研究手法は最近現れたばかりで、両手法に対して深い理解を持つ研究者は非常に限られています。そこで、海外派遣制度を利用して、密度汎関数理論の基礎研究の大家であると同時に、機械学習を取り込んだ手法開発も精力的に行っているBurke教授のもとに訪問し、研究を行いました。
活動内容
これまで密度汎関数は物理的条件などを慎重に組み合わせて手探りの開発が行われていました。一方、自身の研究では、機械学習手法を用いればこれらの既存の汎関数と同等かそれ以上の精度を持つ汎関数を、高精度波動関数理論のデータから機械的に構築できることが示されました。しかし、提示した手法にはまだまだ不明な点が多く、より高精度化するにはどのようなアプローチが適切か不明瞭でした。そこで、Burke教授からこれらの不明な点を分析するための提案を頂き、非常に興味深い方法で手法の性質を分析しました。結果として、手法の精度向上に必要な様々な条件が判明し、より良い汎関数開発のために重要な洞察を得ることができました。
なりゆきでBurke教授のDFTの授業を受けることになったのですが、さすが本元だけあって非常にレベルが高く、並大抵のテキストには書かれていないような基礎理論に関する深い理解を得ることができました。
生活面では、アーバインは大学関係者と富裕層が多く、人々のマナーや教養の平均が非常に高い街だと感じました。また、土地が広大なぶん生活には車がほぼ必須で、学生や職員のほとんどはキャンパス内の寮・家に住むか車で通っていました。
様々な経験・知識を得ることができ、とても有意義な滞在でした。教授にいつでもまた来ていいと言われ、貴重な人脈を得ることができたと思います。
当面の間はBurke教授との共著に向けて滞在先で得た結果・議論について詳細を詰めていく予定です。
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