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中辻研の鈴木慎太郎氏、ジョンズ・ホプキンス大学滞在報告

物性研究所中辻研究室の鈴木慎太郎氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して米国のジョンズホプキンス大学へ8月6日から10月11日まで滞在、価数揺動系α-YbAlB4の極低温非弾性中性子散乱測定を行ってきました。

このプログラムは、2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。


中辻研究室D3 鈴木 慎太郎

目的

価数揺動系α-YbAlB4に磁場を印加した際に見られる異常金属状態の起源解明を目的に、系の微視的相関を直接観測できる非弾性中性子散乱測定、Collin L. Broholm教授のグループと研究を行うことにしました。

活動内容

今回の測定に用いたα-YbAlB4疑似単結晶の写真。アルミニウムのプレート上に見える小さな黒点が単結晶であり、65個の単結晶が誤差2度程度の範囲ですべて平行に並べられている。
今回の測定に用いたα-YbAlB4疑似単結晶の写真。アルミニウムのプレート上に見える小さな黒点が単結晶であり、65個の単結晶が誤差2度程度の範囲ですべて平行に並べられている。

従前の共同研究により、物性研にて合成したα-YbAlB4疑似単結晶はすでにジョンズホプキンス大学(JHU)に持ち込んでいました。

今回、同サンプルを非弾性中性子散乱測定を行うため、装置の調整や、信号観測のためにサンプルセットアップ角度の計算などが必要でした。そこで、到着直後よりサンプルステージ用ジグ作成などの準備を行いました。その後、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)にある研究用原子炉(NIST Center for Neutron Research, NCNR)へ移動し、8月21日から28日にかけて、極低温非弾性中性子散乱測定を行いました。そして得られた結果を、Broholm教授との綿密な議論により解析しました。

その結果、この系が示す異常金属状態は従来の重い電子系と異なり、スピン揺らぎによるものではない新しいタイプの起源に基づくことを発見しました。引き続き、帰国後の現在も更なる解析を行っています。

今回利用した中性子ビームラインThe Multi Axis Crystal Spectrometer (MACS)
今回利用した中性子ビームラインThe Multi Axis Crystal Spectrometer (MACS)
MACSでの実験の様子

MACSでの実験の様子

滞在中、特に印象的だったのはBroholmグループの非常に自由な雰囲気でした。学生が教授に話しかける際の挨拶は ”Hi, Collin” であったし、Broholm教授の居室のドアは学生がすぐに質問に入ってこられるよう、教授の仕事が忙しくない限りは半開きになっていました。JHU他学科の学生に話をする機会があり、聞いてみると、このようなフランクな空気はJHUの中でも物理学科特有のものらしく、私のように日本からやってきた者としてはとりわけ大きなカルチャーショックでした。

Broholm教授との写真
Broholm教授との写真
現地でのカニパーティーの様子。Baltimoreは港町であることからカニが採れることでも有名であり、物理学科でも年に1度カニを食べるパーティーが催される。テーブル上にあるハンマーでカニの甲羅を割り、手で剥いて食べるのが一般的。写真に写っているのは同席した現地学生並びに研究員。
現地でのカニパーティーの様子。Baltimoreは港町であることからカニが採れることでも有名であり、物理学科でも年に1度カニを食べるパーティーが催される。テーブル上にあるハンマーでカニの甲羅を割り、手で剥いて食べるのが一般的。写真に写っているのは同席した現地学生並びに研究員。

今後も交流・連絡を継続し、得られた結果についての解析・議論を行うほか、米国にてα-YbAlB4巨大単結晶合成のプロジェクトが現在も進行中です。今回の滞在で得た縁を生かし、日本よりこれら活動を牽引できるよう、引き続き研究に邁進していきたいと考えています。


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(公開日: 2017年11月28日)