ISSP - The institute for Solid State Physics

物性研について
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所長室から

Director IYE Yasuhiro物性研究所は東京大学附置の全国共同利用研究所として1957年に設立され、物性科学分野における我が国の中核的研究機関としての役割を果して来ました。六本木キャンパスにおける約40年間の活動を経て2000年に東大柏キャンパスに移転しましたが、早いものでそれから10年以上が経過しました。移転の機会に建物をはじめインフラの整備ができたおかげで、柏では六本木時代に比べて格段に良好な実験環境が得られています。移転当初、大きな問題であった交通の便も、2005年8月に「つくばエクスプレス」が開業して以降かなり改善されています。柏には物性研究所のほかに、宇宙線研究所、新領域創成科学研究科、数物連携宇宙研究機構、大気海洋研究所など、先端的な研究教育を行う部局が集い、教職員・大学院生あわせて3000人ほどが活動するキャンパスへと発展してきました。

国立大学附置全国共同利用研究所を新たに共同利用・共同研究拠点として認定するという文部科学省の方針にしたがって、物性研究所も認定を受け、2010年4月から6年間という区切りで共同利用・共同研究拠点としての活動を開始しています。共同利用・共同研究は物性研究所が創立以来行ってきたことですので本質的変化はありませんが、共同利用施設専門委員会の位置づけが「共同利用の課題採択の決定機関」として、より明示的になるなどいくつかの変更点がありました。

伝統的にはスモールサイエンスに属していると目される物質科学においても、大型設備を用いた研究の比重は近年とみに増しています。物性研究所では、一般の学部・研究科ではその維持運営が困難な大型研究施設のいくつかを運営し共同利用・共同研究に供しています。放射光に関しては、 SPring-8の長直線部に垂直および水平の長尺アンジュレーターを配した東京大学アウトステーション物質科学ビームライン(BL07LSU)が2009年秋から稼動を始め、世界最高性能の軟X線領域放射光を利用した時間分解光電子分光や軟X線発光分光などの研究成果が出始めています。中性子に関しては、東海のJ-PARC物質生命科学実験施設(MLF)のBL12にKEKの物質構造科学研究所と共同建設した高分解能チョッパー分光器(HRC)が稼働し始めたところで大震災に遭い、JRR-3の実験設備とともに稼働停止を余儀なくされました。関係者の努力によって設備はほぼ復旧し、実験の再開を心待ちにしているところです。強磁場に関しては、非破壊型ロングパルス用フライホィール付き直流電源が本格稼動し、100テスラ非破壊パルス磁場の実現に向けてコイル開発が進んでいます。電磁濃縮法による破壊型パルス超強磁場については副コンデンサバンクの老朽化という問題を抱えていましたが、最先端研究基盤整備事業に採択されたことによりその更新と主バンクの増強が叶うこととなりました。次世代スーパーコンピューターに関しては、戦略分野2「新物質・エネルギー創成」の代表機関を物性研が務め、分子科学研究所や東北大学金属材料研究所ととともに計算物質科学イニシアチブ(CMSI)を組織しています。これに対応する所内組織として、「計算物質科学研究センター」を2011年4月に発足させました。また、物性研で培ってきた放射光と極限レーザーの特徴を活かした先端的光物性科学を推進する体制を整えるべく「極限コヒーレント光科学研究センター(仮称)」の設立に向けて準備を進めています。

2012年4月
家 泰弘