押川研の小林良平氏、シカゴ大学滞在報告(2回目)
物性研究所押川研究室の小林良平氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して、米国シカゴ大学に4月1日から5月31日まで滞在し、トポロジカル相の理論に関する共同研究を行いました。
このプログラムは2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。
小林良平氏は2018年1~3月にもシカゴ大学に滞在しており、今回は2回目になります。
押川研究室D1 小林良平
目的
シカゴ大における、笠准教授をはじめとした研究者との議論を通して、フェルミオントポロジカル相を記述する場の理論の構築を行うことを目的とした。加えて、周期駆動系におけるトポロジカル相や、上に述べた研究の発展に関連する共同研究を行うことを目指した。
概要
シカゴ大学における笠准教授との議論を契機として、向きづけ不可能な時空におけるフェルミオン・トポロジカル相を記述する場の理論の定式化を完成させ、論文として投稿した。加えて、周期駆動系におけるトポロジカル相や、パラフェルミオン系のトポロジカル相に関する共同研究を、笠准教授らと始めた。
活動内容
時間反転対称性のような、時空の向きを入れ替える対称性に基づいたSPT相や量子異常を議論するために、向きづけ不可能な時空におけるトポロジカル相の分配関数を考えることが基本的に重要である。我々は、フェルミオントポロジカル相の有効理論である位相的場の理論を、向きづけ不可能な時空における格子上で定式化した。その帰結として、時間反転対称性を伴うGu-WenのフェルミオンSPT相の境界が、常にギャップを持つように構成可能であることを示した。また、2+1次元トポロジカル相における時間反転対称性の量子異常を計算する公式を導出した。以上の研究は、シカゴ大滞在時における笠准教授との議論を契機として始め、滞在中に論文として投稿した(arXiv: 1905.05902) 。加えて、周期駆動系におけるトポロジカル相や、上に述べた研究の発展に関連する共同研究を、笠研の人たちと始めた。それ以外にも、Michael Levin准教授らとトポロジカル秩序に関する議論を行った。
シカゴ大学のように、トポロジカル相に関する理論研究の第一人者が集結する環境は、当該研究の遂行にとって理想的であった。加えて、笠研では量子カオスや熱化に関連する研究も盛んに行われており、関連するトピックを初歩から勉強することができた。これらの知見を活かし、他分野の研究者との共同研究への端緒としたい。

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