柴山研の辻 優依氏、マサチューセッツ大学滞在報告
物性研究所柴山研究室の辻 優依氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して、マサチューセッツ大学に9月1日から10月31日まで滞在し、高分子電解質ゲルの相転移の誘起メカニズムおよびダイナミクスの調査を目的とする研究を行いました。
このプログラムは2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。
柴山研究室D1 辻 優依
概要
高分子電解質ゲルの相転移の誘起メカニズムおよびダイナミクスの調査を目的としてアメリカ・マサチューセッツ州にあるThe University of Massachusetts, Amherst校のMuthukumar教授の下で2ヶ月間研究を行なった。
活動内容
高分子ゲルは溶媒組成や温度といった外部環境を変化させることで体積相転移という、体積がある条件で不連続に変化するといった現状を起こす性質を持つ。高分子ゲルのうち、電荷を持った高分子電解質ゲルでは、複数のイオンの共存した溶液下で体積相転移を起こすことが確認されている。この現象に対して、動的光散乱測定によって、熱力学的な観点からそのメカニズムを調査することを目的として研究を行った。
初めの1週間は事務手続きや、安全講習を受講しなければならず、実験を行うことができなかった。実験が可能となった後はまず条件検討を行うことから始めた。この際に、ゲルの合成、膨潤といった過程を経なければならず、条件検討だけでも1ヶ月という長い時間を要してしまった。そのため、実際の測定を行えたのは10月からであった。その後もサンプル調製に長い時間を要してしまい、目的としていた測定まで行うことは出来なかった。
一方で、高分子ゲル中のゲスト高分子鎖のダイナミクスについても測定を行なっており、こちらについては引き続き日本でも測定を行う予定である。
マサチューセッツ大のPolymer Science and Engineering (PSE)では様々な専攻から学生を受け入れていることが印象的であった。今回滞在したMuthukumarグループにおいても、高分子科学専攻の学生のみならず、物理学専攻、化学工学専攻からの学生を受け入れており、異なる観点からの意見を得ることができ有意義であった。
今回訪れたのは9-10月で木々が色づき、気温もそれほど低くない過ごしやすい季節であった。また、今回訪れたAmherstは小さな街で、ラボのメンバーのみならず、日常生活でも、困っていることがあるとすぐに周りの人が声を掛けてくれて、何度も助けられた。移民の国だからこそ、こういった助け合いの精神が育まれていったのだろう、と思うと同時に、自らもすぐに周りの人に手を差し伸べられるような人間でありたいと強く思った。
今回得た知見や縁を今後の研究に活かして行きたい。
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