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押川研の小野 清志郎氏、カブリ理論物理学研究所滞在報告

物性研究所押川研究室の小野 清志郎氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して、米国カブリ理論物理学研究所に9月3日から10月4日まで滞在し、様々な空間対称性を持った系のトポロジカル相を系の詳細によらず対称性の情報のみに基づいて分類する「対称性指標」という手法の拡張と応用に関する研究を行いました。

このプログラムは2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。


押川研究室M2 小野 清志郎

目的

対称性指標の拡張と応用に関する研究を進展させること

活動内容

波動関数のトポロジーによって特徴付けられるトポロジカル相は、自発的対称性の破れの枠組みでは記述できない新奇な相である。近年、非自明なトポロジーをもつ物質(トポロジカル絶縁体・超伝導体)の探索が精力的に行われてきた。トポロジカルに自明かどうかはトポロジカル不変量を計算することによって区別されるが、一般に物質中のトポロジカル不変量を定義に則り計算するのは容易ではない。しかし結晶対称性の存在下では、トポロジカル不変量そのもの、あるいは整数値をとるトポロジカル不変量の剰余を結晶対称性の情報を利用して容易に計算することができ、この手法は対称性指標と呼ばれている。従来は絶縁体に対してのみ提案された手法であったが、この手法を他の系に対して適用できないかということについて、KITPにいた多くの研究者と議論を行った。

滞在先であるカブリ理論物理学研究所の外観

滞在先であるカブリ理論物理学研究所の外観
エイブルールスキューワの作成方法の展示物
エイブルールスキューワの作成方法の展示物

研究以外では、Solvangのデンマーク民族の伝統を祝う「デンマークの日」に行った。そこで食べた郷土料理である「エイブルールスキューワ」がたこ焼きと同じような器具で作られていることを学んだ。

今回の滞在での様々な議論を通じて、自身の研究の進展を得たのみならず、そこから少し外れた分野への知識・面白さを実感することができた。今後は、ここで得た経験を元に新しい研究を展開していきたいと思う。

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(公開日: 2019年10月31日)