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第23回物性研究所所長賞を鈴木剛氏、稲村寛生氏、吉見一慶氏・本山裕一氏・青山龍美氏に授与

3月4日、第23回(令和7年度)物性研究所所長賞授与式が行われました。物性研で行われた独創的な研究、学術業績により学術の発展に貢献したものを称え顕彰するISSP学術奨励賞には、岡﨑研究室の鈴木剛元助教(現:大阪大学 准教授)と物性理論研究部門の稲村寛生元特任研究員(現:オックスフォード大学 Leverhulme-Peierlsフェロー)が選ばれました。そして技術開発やその他活動により物性研究所の発展に顕著な功績のあったものを称え顕彰するISSP柏賞は物質設計評価施設の吉見一慶特任研究員、本山裕一技術専門職員、青山龍美特任研究員に授与されました。

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前列左から:廣井善二所長、鈴木剛氏、稲村寛生氏、吉見一慶氏、松田康弘副所長。後列は推薦人代表者と受賞者、左から:岡﨑浩三准教授、川島直輝教授、押川正毅教授、本山裕一氏、青山龍美氏、加藤岳生准教授

物性研究所 所長賞 歴代受賞者

ISSP学術奨励賞

鈴木剛氏「時間分解光電子分光とX線回折による非平衡固体物性の研究」
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鈴木氏は物性研究所で開発されてきた時間分解光電子分光装置を責任者としてその管理・改良を担い、これを用いて様々な量子物質の非平衡電子状態の解明に取り組み、顕著な成果を挙げてきました。主な成果として、鉄系超伝導体FeSeにおける光誘起超伝導の兆候の発見[1]、準結晶2層グラフェンにおける上下層間に生じるキャリア不均衡の発見[2]、加えて、励起子絶縁体候補物質Ta2NiSe5の光誘起絶縁体・金属転移の機構を解明するため、周波数領域角度分解光電子分光法を開発し、電子・格子相互作用の観点からその性質を解明[3]するなどしています。さらに近年では、励起光の波長を中赤外領域まで可変する装置へのアップグレードも主導しました[6]。一方、光励起後の格子構造ダイナミクスに関する知見を得るため、X線自由電子レーザーSACLAを用いた時間分解X線回折測定を鉄系超伝導体BaFe2As2について実施し、超高速格子構造ダイナミクスの観測に成功しました[7]。また、新奇な電荷密度波物質VTe2においては、超高速格子変調ダイナミクスを捉え、電荷密度波の振幅モードの観測にも成功しました[8]。

以上のように、時間分解光電子分光とX線回折を協奏的に活用することで非平衡固体物性の解明に大きく貢献してきたことが評価されました。

稲村寛生氏「圏論的対称性を持つ量子多体系の分類および構成」
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稲村氏は、圏論的対称性を持つ量子系におけるトポロジカル相の分類について基礎的かつ重要かつ先駆的な成果をあげてきました。対称性は物理学の最も重要な概念の一つですが、近年、高次対称性や圏論的対称性など、新しい対称性の概念が提案されています。このような新しい対称性のもとでのトポロジカル相の分類は、理論物理学の最先端の問題であり世界の第一線の多くの研究者が取り組んでいます。

このような背景の中、同氏は1+1次元において有限の圏論対称性を持つ場の理論を分類し、それらに対応する全てのトポロジカル相の構成を行いました。これは圏論対称性を持つトポロジカル相の理論の基本となる成果であり、今後の当該分野の発展において重要な役割を果たすと期待されます。特筆すべきは、Xiao-Gang Wen氏ら第一線の研究者と共同研究を展開する一方、重要な成果の多くは稲村氏の単著論文として発表されていることです。これらの成果は世界的に注目を集めており、数学と物理両面から非常に高く評価されています。

ISSP柏賞

吉見一慶特任研究員、本山裕一技術専門職員、青山龍美特任研究員「計算物性科学分野のオープンソースソフトウェア開発」
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吉見氏、本山氏、青山氏は、物質設計評価施設でスパコン共同利用事業の一貫として行っているソフトウェア開発・高度化事業(PASUMS)[1] の技術開発チームの中核メンバーです。本事業は、物性研のスパコン利用をより簡便にすることによって、共同利用スパコンの高効率な活用を促進するものであり、開発されたソフトウェアが物性研スパコン上で活用されています。本事業を推進する副産物として、17件のソフトウェアがオープンソースソフトウェアとして公開され、全国の他のスパコンセンターや、一般ユーザのパソコン上でも利用されています。この活動は、計算物質科学コミュニティに広くオープンソースコード開発のモデルケースを示すことで、計算科学の新しい潮流を作り出しました。このことが、多くの高性能スパコン供与機関とユーザ機関からなる社団法人HPCIコンソーシアムによって評価され、MateriAppsとともに第1回HPCIソフトウェア賞普及部門最優秀賞を受賞しています[2]。 また、この事業によって生み出されたソフトウェアの中から、HPCIソフトウェア賞開発部門最優秀賞を多変数変分モンテカルロ法アプリケーションmVMC [2,3]が,同じく優秀賞をHΦ [2,4] がそれぞれ受賞しています。

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(公開日: 2026年03月05日)