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第21回物性研究所所長賞を永井暸氏、後藤弘匡氏、青木敦弘氏に授与

3月6日、物性研究所にて第21回(令和5年度)物性研究所所長賞授与式が行われました。物性研で行われた独創的な研究、学術業績により学術の発展に貢献したものを称え顕彰するISSP学術奨励賞には、永井暸氏(元:杉野研究室、現:株式会社Preferred Networks)が選ばれました。そして技術開発やその他活動により物性研究所の発展に顕著な功績のあったものを称え顕彰するISSP柏賞は物性設計評価施設高圧合成室の後藤弘匡技術専門職員と物性研事務部の青木敦弘事務長に授与されました。

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前列左から:松田康弘副所長、青木敦弘氏、後藤弘匡氏、永井暸氏、廣井善二所長
後列はそれぞれの推薦人代表者および代理、左から:山室修教授、岡本佳比古教授、加藤岳生准教授

物性研究所 所長賞 歴代受賞者

ISSP学術奨励賞

永井瞭氏「密度汎関数理論の機械学習による構築」
Speaking Nagai
永井暸氏

永井氏は、密度汎関数理論という固体中の電子状態計算(第一原理計算)手法について、これまで近似を用いていたエネルギー汎関数を、機械学習を用いて構築できることを初めて示しました。小さい分子系の波動関数から機械学習によりエネルギー汎関数を導く同手法は、直感的および経験則に従った近似に頼ることなく、系統的に計算精度を向上させられる可能性を提示しています。また、分子系に限らず、物理的条件と機械学習を組み合わせたアプローチにより固体結晶の汎関数を構築する応用性も指し示しました。当該分野における一つの課題「波動関数は機械学習可能なのか」への挑戦であり、高い構想力と実装力が成し得た成果です。こうした機械学習を用いた多岐にわたる成果が評価され、受賞に至りました。

  1. Ryo Nagai, Ryosuke Akashi, Shu Sasaki, and Shinji Tsuneyuki; The Journal of Chemical Physics, 148, 241737 (2018).
  2. R. Nagai, R. Akashi, and O. Sugino; npj Compt. Mater. 6, 43 (2020).
  3. R. Nagai, R. Akashi, and O. Sugino; Phys. Rev. Res. 4, 013106 (2022).

ISSP柏賞

後藤弘匡氏「高圧実験技術の開発と共同利用研究の推進による高圧研究分野全体への貢献」
Speaking Goto
後藤弘匡氏

後藤氏は長年にわたり、高圧合成室に設置されている複数の高圧発生装置、実験に必要不可欠な部品を作成するための多数の工作機械類、高圧実験後の回収試料の分析に用いるX線回折装置等の分析機器など、共同利用に供される多種多様な実験装置の維持管理を担当しています。これらの機器を使う多くのユーザーへの研究・技術支援を行い、それらの活動を通して高圧力を利用する研究の発展と若手研究者や学生への教育に大きく貢献してきました。同氏は、装置の維持に止まらず、小型軽量な新しい対向アンビル型高温高圧発生装置の開発やマルチアンビルプレスを使った高温高圧その場中性子回折実験のための技術開発といった新しい実験技術の開発も行ってきました。同技術を用いた共同研究も推進しており、中性子を利用した高圧力研究分野の進展にも寄与しており、日本高圧学会においてもその貢献が認められました。共同利用研としての発展に大きく貢献するだけではなく、高圧力を利用した研究全体の発展についても多大な功績が認められ、本賞が授与されました。

  1. H. Gotou, et. al., Rev. Sci. Instrum. 77, 035113 (2006).
  2. H. Gotou, et. al., High. Press. Res. 31, 592-602 (2011).
  3. 山田, 後藤 他、高圧力の科学と技術 26, 99-107 (2016).
  4. R. Iizuka-Oku, et.al., Nat. Commun. 8, 14096 (2017).
  5. R. Iizuka-Oku, et.al., Sci. Rep. 11, 12632 (2021).
青木敦弘氏「物性研の環境整備、安全管理等に対する多大なる貢献」
Speaking Aoki
青木敦弘氏

青木氏は物性研事務部の事務長として、約5年の間、職員1人1人の強みを引き出す指導を行い、強いリーダーシップで事務部職員を牽引してきました。なかでも、煩雑化していた所内の規則や内規の整理提案、円滑な所長交代の補助など物性研に資する業務への貢献が際立ちます。コロナ禍における対応では、安全衛生管理および共同利用研としての方針策定を迅速に行い、構成員の安全と安心に大きく貢献しました。また、活躍の機会は物性研にとどまらず、柏ゲストハウスの改修や、階段手すりの増設などキャンパス全体の環境整備についても取り組んでいます。こうした日々の取り組みや環境整備、安全管理等の多大な貢献が評価され、本賞が授与されました。

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