フランス・グルノーブルにあるNeél Institute, National Centre for Scientific Research (CNRS)の Christophe Marcenat 博士とThierry Klein 教授、スロバキア科学アカデミー(スロバキア・コシツェ)のJozef Kačmarčík 博士と比熱測定を行いました。
活動内容
Jozef Kačmarčík博士と実験装置の前で
トポロジカルに非自明な磁気構造が現れる磁性体の相図を明らかにしてその起源を解明すること、および交流比熱測定の手法を習得することを目的として、スキルミオンやヘッジホッグ等の磁気構造が現れる磁性体における比熱測定を行いました。Marcenat 博士・Klein 教授の共同研究者であるSlovak Academy of Sciences のJozef Kačmarčík 博士の元でも実験を行いました。Kačmarčík 博士はグルノーブルのアパラタスとは異なる、熱電対を用いたセットアップも保有しており、それぞれのセットアップの特徴、および測定系構築のノウハウも学ぶことができました。上記の実験に加えて、滞在中には別のテーマで共同研究を行っているカールスルーエ工科大のMarkus Garst 教授を訪れて議論と講演を行いました。
コシツェの研究所は100年以上前の元女学校の校舎を転用しており、美しい内装が印象的
滞在中、ラテン系、ゲルマン系、スラブ系をはじめとする多様な文化や価値観に触れる機会がありました。例えば、始業時間や休憩の取り方一つをとっても国によって異なり、働き方や時間の使い方に対する考え方の違いを実感しました。またスロバキアでは、ウクライナの戦禍から避難してきた博士学生の生々しい体験を直接聞く機会があり、日常の何気ない平穏が決して当たり前ではないことを強く実感しました。研究に没頭できる環境がいかに恵まれているかを改めて考えさせられる貴重な経験となりました。
相図の解明にとどまらず、系の動的な振る舞いを直接観測できたことで、新たな知見が得られました。特に後者は交流法を用いたことで引き出せた新たな側面であり、この手法の有用性も改めて認識しました。今後は、この知見を活かし、系の動的な性質にも焦点を当てた研究をさらに発展させたいと考えています。