今城周作特任助教(金道研)が日本物理学会若手奨励賞を受賞
金道研究室の今城周作特任助教は、第18回(2024年)日本物理学会若手奨励賞(領域7)に選ばれました。同賞は、優れた研究を行ったと認められる将来性ある若手研究者に贈られる賞です。今城氏は同賞の受賞にあたり、3月20日、日本物理学会2024年春季大会(オンライン)で受賞講演を行いました。
講演内容は、「有機物の非従来型超伝導の研究」です。
有機分子がもつπ電子が結晶中で遍歴的になる物質は有機導体と呼ばれ、超伝導や磁性などさまざまな電子物性を示すことが知られています。有機導体中では有機分子は弱い分子間力によって積層しているため、分子間の重なり積分は比較的小さく、電子間のクーロン斥力と同程度のエネルギーとなることで強相関電子系が実現します。このような状況で発現する超伝導状態は非従来型機構を有すると期待されています。
今城氏は磁場角度分解熱測定から、有機導体でもモット反強磁性絶縁相の隣接相として超伝導を示す系では、反強磁性スピン揺らぎを媒介にした非従来型超伝導が現れ、その超伝導対称性は有機分子の配列に依存することを示しました。一方、磁性ではなく電荷秩序非磁性絶縁相を隣接相とする有機超伝導体も存在し、そちらの測定をするとサイト間のクーロン斥力を起源とした電荷揺らぎを媒介にした非従来型超伝導が現れることを明らかにしました。どちらも同一の有機分子を用いた超伝導体ですが、分子配列に依存して全く異なった超伝導状態が実現するという非常に興味深い結果を得ました。
また、有機導体は強相関性以外にも低次元性も有するため、強磁場中でFFLO状態と呼ばれる非従来型超伝導が現れると理論的に予想されていました。有機超伝導体の一つで磁場角度制御をしながら超音波測定を測定したところ、FFLO状態に特有の空間変調性という特徴を検出することに成功しました。
現在、有機超伝導の研究の注目度はあまり高くありませんが、同氏の研究では有機物が非従来型超伝導の理解に重要な知見を与える系であることを示しました。
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