松田巌教授らが、日本表面真空学会会誌賞を受賞
松田巌教授らが、2025年度の日本表面真空学会 会誌賞を受賞しました。この賞は、過去2年間に学会誌「表面と真空」または学会発行の e-Journal of Surface Science and Nanotechnology へ掲載された原著論文以外の記事が、日本表面真空学会会員の啓蒙に特に大きく貢献したと認められる個人会員に与えられるものです。10月20日から22日につくば国際会議場で開催された日本表面真空学会学術講演会にて受賞講演が行われました。
受賞対象となった論文は「Structure and Electronic State of Boron Atomic Chains on a Noble Metal (111) Surface」で、著者である辻川夕貴(松田巌研 特任助教、現:慶應義塾大学 助教)、Xiaoni Zhang (松田巌研PD)、 堀尾眞史(松田巌研助教)、小森文夫(東京大学名誉教授)、中嶋武(東京科学大学 助教)、安藤康伸(東京科学大学 准教授)、近藤剛弘(筑波大学 教授)、松田巌 教授に授与されました。
Cu(111)単結晶にホウ素を蒸着して合成される表面は2019年に初めて報告されました。当初、この表面はホウ素の単原子層であるボロフェン(Borophene)であると考えられていました。他方、ホウ素と銅という新たな化合物の探求という別のアプローチで研究を行っていたグループによって2021年に、同表面がホウ素と銅の化合物であると報告されました。ホウ素は多形性と呼ばれる多彩な構造をとる性質をもつため、報告された構造モデルはどれも理論的に安定しており、正しい構造について議論が展開されていました。これに対し、本研究グループは全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いることで、同表面が二次元ホウ化銅(Cu-boride)であると証明しました。さらに、電子状態の詳細な測定と理論計算から、Cu-boride表面における一次元のホウ素鎖がその合成に重要な役割を担っていることを突き止めました。受賞論文ではCu(111)基板上のCu-boride表面について、その構造、化学状態およびバンド構造まで、この新たな化合物について包括的に報告されています。
対象論文
- "Structure and Electronic State of Boron Atomic Chains on a Noble Metal (111) Surface", e-J. Surf. Sci. Nanotechnol. 22, 1–8 (2024) | DOI: 10.1380/ejssnt.2023-058
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