小林 洋平 教授、谷 峻太郎 助教、池田 達彦 元助教が文部科学大臣表彰を受賞
小林洋平教授と谷峻太郎助教が令和5年度文部科学大臣表彰の科学技術賞(研究部門)を、池田達彦元助教(現:理化学研究所)が若手科学者賞を受賞しました。科学技術賞(研究部門)は、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った者に、若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に授与されるものです。
科学技術賞(研究部門)
小林 洋平 教授・谷 峻太郎 助教:レーザー加工におけるサイバーフィジカルシステムの研究
若手科学者賞
池田 達彦 元助教:フロケ理論を用いた光物性現象の解析と新現象探索の研究
● 科学技術賞(研究部門)
小林教授と谷助教は、全自動で条件を変えながらレーザー加工を行う装置を開発し、そこから得られる高品位で大量の実験データに深層学習を適用してレーザー加工のシミュレータを開発しました。さらに、AIを搭載することで自律的に加工する材料・形状等に最適条件を見つけ出し、完全遠隔でレーザー加工を行うサイバーフィジカルシステム(CPS)を実現しました。
人口減少先進国である日本では、労働力が減少する一方で超スマート社会を実現するためには生産効率の向上が必須となっています。レーザー加工は次世代デジタルものづくりの中核として期待されていますが、加工条件は職人の経験と勘に頼り人的コストが高いことに加え、後継者不足の課題を抱えています。
本研究は、レーザー加工への深層学習の可用性を示し、レーザー加工の条件探索を短時間で行うことを可能にしました。これは一品ずつ異なる製品をつくる少量多品種生産への重要なステップとなります。本成果は、Society5.0に必須の、ものづくりにおけるサイバーフィジカルシステムの在り方を提案し、完全遠隔で条件探索や物理実験が可能であることを示しました。また実験環境の格差がなく理論家でも実験ができる装置の実現は、研究やデータ活用社会の在り方に対する新しい考え方の構築に寄与することが期待されます。
関連論文
- “Fully Automated Data Acquisition for Laser Production Cyber-Physical System” IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics ( Vol.27, No.6, Nov.-Dec. 2021)
関連ページ
- 令5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者 科学技術賞 |MEXT
- 東京大学物性研究所 小林研究室
- 2022.11.04物性研ニュース日本の産業と技術革新の基盤となる「レーザー加工」 -人口減少とSociety 5.0時代に「ものづくりCPS」を提案-
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- 2018.10.23プレスリリース極端紫外線レーザーにより熱影響が極めて少ない材料加工を実現 -レーザー加工メカニズムの解明や最適加工の実現に期待-
- 2017.11.27プレスリリース「TACMIコンソーシアム」を設立 -産官学連携で光ものづくり協創を目指す-
● 若手科学者賞
池田元助教は、レーザー等で物理系を時間周期的に駆動し、有用な機能性を高速で作り出す「フロケ・エンジニアリング」を現実の物質に適用する指針となる、散逸のある量子系を周期駆動して生じる非平衡定常状態を表す一般公式を発見しました。
「フロケ・エンジニアリング」は、レーザー等の外場で物理系を時間周期的に駆動し、有用な機能性を高速で作り出す概念です。しかし現実の物質に適用するには、周りの環境とのエネルギーのやり取り(散逸)が避けられないために、基礎理論が十分に発達しておらず、応用には課題がありました。同氏は、現実の物質に適用する指針となる一般公式を求め、さらに方程式の対称性を駆使することで、個別詳細な数値解析を用いずに、時間結晶や高次高調波発生などの非平衡物性を予測する理論を構築しました。
本成果は、物性を高速に変換可能な量子デバイス実現への指針を与え、高度情報化社会の基盤技術に繋がると期待されます。
関連論文
- “General description for nonequilibrium steady states in periodically driven dissipative quantum systems” Science advances, Vol.6, No.27, (2020)
- “High-order nonlinear optical response of a twisted bilayer graphene” Physical Review Research 2, 032015(R) (2020)