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北川健太郎(元物性研特任研究員)ら、瀧川研と元大串研のグループが日本物理学会論文賞を受賞

北川健太郎(元物性研究所・瀧川研特任研究員、現東大理学系研究科講師)、片山尚幸(元物性研究所・大串研特任研究員、現名古屋大工学研究科准教授)、大串研也(元物性研究所特任准教授、現東北大理学研究科教授)、吉田誠(元物性研究所・瀧川研助教、現マックスプランク固体物理学研究所研究員)、瀧川仁教授らが、日本物理学会の第24回(2019年)論文賞を受賞しました。この賞は、日本物理学会が刊行する英文学術雑誌に発表された論文の中から、物理学に重要な貢献を果たしたものに贈られます。

受賞者、左から:瀧川仁氏、北川健太郎氏、片山尚幸氏、大串研也氏

受賞者、左から:瀧川仁氏、北川健太郎氏、片山尚幸氏、大串研也氏

受賞対象となった研究は「75ヒ素核NMRによる鉄系超伝導体の母物質BaFe2As2における遍歴反強磁性の研究」です。

この論文は、2008年に東工大・細野グループで発見された鉄系超伝導体に関連して、超伝導発現の舞台となる母物質BaFe2As2の磁性の基礎的性質を明らかにした研究の成果です。著者らは自己フラックス法を用いて作成された高品質のBaFe2As2単結晶に対する75ヒ素核磁気共鳴(NMR)の精密測定と独自の手法による解析を行いました。その結果、この系の遍歴反強磁性秩序が一次の構造相転移と同時に発現することを見出し、中性子散乱実験で観測されていたストライプ型の反強磁性スピン構造に対して独立な証拠を示しました。

また核磁気緩和率の測定を通じて、常磁性相においてもストライプ型の反強磁性スピン揺らぎが発達することを示すなど、ヒ素核のNMRがこの系の電子状態のミクロな性質の解明に優れたプローブになることを明らかにしました。特に、磁気構造の解析から得られた超微細相互作用テンソルの値は、その後の鉄系超伝導体に対する核磁気共鳴研究のデータ解析において重要な役割を果たしています。本論文が発表された当時は鉄系超伝導の発見直後であり、多くの研究が超伝導状態の解明を目指したもので激しい競争が繰り広げていました。その中で、本論文は、超伝導を発現する舞台となる母物質の磁性に焦点を当てた精密な実験及び解析を行い、その後の鉄系超伝導体の物性研究の基礎を築いた点が評価されました。

対象論文

  • “Commensurate Itinerant Antiferromagnetism in BaFe2As2: 75As-NMR Studies on a Self-Flux Grown Single Crystal”, J. Phys. Soc. Jpn. 77, 114709 (2008).

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(公開日: 2019年03月25日)