ISSP - The institute for Solid State Physics

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瀧川研究室
教授
瀧川 仁
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核磁気共鳴法(NMR)を主な実験手段として、固体内の強い電子間相互作用に起因する現象を研究している。強相関電子系では、超伝導、強(反強)磁性、電荷秩序、軌道秩序といった多彩な秩序状態が拮抗しており、磁場・圧力などの外的条件を変えることでこれらの間の量子相転移が起こり得る。原子核は固有の磁気モーメントや電気四重極モーメントを持っており、これらは周囲の電子が作る磁場や電場勾配を感じている。このためNMRは、固体内電子のスピン、電荷、軌道などの自由度が絡み合って現れる特異な秩序状態や揺らぎの性質を、ミクロに探る有力な実験手段となる。我々は色々な特色を持つパルスNMR測定装置を整備し、低温・強磁場・高圧などの外的環境条件と組み合わせて、遷移金属化合物、希土類化合物や有機固体を対象とした研究を行っている。

隣り合うスピン2量体が平面内で直交配列した量子磁性体SrCu2(BO3)2の、極低温・高磁場におけるホウ素(B)原子核のNMRスペクトル。測定に用いた試料は、磁性元素である銅(Cu)のうち0.5%を非磁性元素である亜鉛(Zn)で置き換え、意図的に不純物を導入してある。不純物から遠いスピン2量体はシングレットを形成するが、不純物によって孤立した銅スピンの周囲には、局所的な反強磁性磁化パターン(スピン・ポーラロン)が現れる。前者は内部磁場ゼロ付近の強い共鳴線(図の矢印)として、後者はそれ以外の15種類の共鳴線によって実証される。
NMRスペクトルの解析から得られた、亜鉛不純物の周りの銅スピンの分布の様子。×は亜鉛不純物を、赤い丸は銅原子を示す。また塗りつぶした赤丸は磁場と同じ向きのスピン、中抜きの赤丸は磁場と反対向きのスピンを表し、丸の大きさはスピンの大きさを表す。黒丸はホウ素の位置を示し、その中の番号は左図のスペクトル線の番号に対応する。NMRスペクトルでは、亜鉛不純物と同じ原子層だけでなく、その上下に隣り合う原子層からの信号も観測されている。

研究テーマ

  1. 低次元、フラストレート・スピン系のダイナミクスと量子相転移
  2. 特異な超伝導体
  3. 強相関電子系における電荷・軌道・多極子の秩序と揺らぎ
  4. 磁性有機伝導体におけるスピンと電荷のダイナミクス