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押川研の福住吉喜氏、パリ第11大学LPTMS滞在報告

物性研究所押川研究室の福住吉喜氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して仏国パリ第11大学のLPMTS(Laboratoire de Physique Théorique et Modèles Statistiques)へ1月10日から2月28日まで滞在、パラフェルミオンと関係する確率模型の研究を行いました。

このプログラムは2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。


押川研究室D2 福住吉喜

概要

二次元統計力学模型は、臨界点において二次元の共形場理論によって記述されることが期待される。二次元の共形場理論は物性でも注目されている特殊な準粒子であるエニオンを理論の構成要素として含んでいる。今回は二次元Ising模型の多成分への拡張であるZ(n)スピン模型の貫通確率を計算することを目標に、SU(2)-Wess-Zumino-Witten模型の相関関数の計算を行った。今回はZ(n)スピン模型のスピンクラスターとの対応からスピン1の相関関数の計算を行った。

活動内容

Z(n)スピン模型の貫通確率はこれまでの研究によりスピン1の四点相関関数の計算に帰着されることが示唆されていた。この相関関数についてボソン化により解析解を積分表示するところまではこれまでの研究で行っていたが、その表示には積分の収束性について微妙な点があった。今回はそれとは別にWess-Zumino-Witten模型における強力な方程式であるKniznik-Zamolodchikov方程式を連立させることで微分方程式系として四点相関関数を得た。この得られた微分方程式系をmathematicaに解かせることで貫通確率に対応するであろう相関関数を計算した。

また、得られた結果をボソン化によって得られた積分表示と比較し、積分の収束する範囲での正当性を確かめた。

場の理論からの計算はできたが、格子模型でのより一般のモンテカルロ計算は現在確認中である。またパラフェルミオンとWess-Zumino-Witten模型についての課題もいくつか見つかった。今後はこれらの課題について確率論的な理解も含めて取り組んでいく予定である。

共同研究者のMarco Piccoの所属するLPTHEからの眺め
共同研究者のMarco Piccoの所属するLPTHEからの眺め

研究以外では、美術館やホロコースト記念館に行った。シュルレアリスムの作品群やベルギーのアウトサイダーアート、ホロコーストを生き延びたロマ人の画家の絵画、黒人女性の作った人形達をそうしたところで見ながらも、街角ではロマ人や黒人の物乞いや押し売りが溢れる現実があった。因みに、私はいまだに黒人系の数学者にあったことはない。そうして日本に帰ってきて書店に立ち寄ると隣国を揶揄、憎悪する本で溢れていた。人類は何も学ばないことを学んだ。


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(公開日: 2018年03月27日)