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超高速量子メモリ動作を引き出す素子設計

東京大学大学院理学系研究科の松尾拓海大学院生(研究当時)、肥後友也特任准教授(研究当時)、中辻知教授(兼:同大学物性研究所 特任教授)と同大学物性研究所の大谷義近教授(研究当時)、三輪真嗣准教授、浜根大輔技術専門職員らの研究グループは、次世代の超高速・低消費電力ロジック・メモリ向け磁気記録層材料として期待される反強磁性体において、スピン軌道トルク(SOT)による磁気状態の電気的スイッチング機構を、膜厚や放熱性を含む素子構造によって制御できることを明らかにしました。特に、発生した熱を効率よく逃がすことで、ジュール熱に頼らず、反強磁性体が本来もつピコ秒(1兆分の1秒)スケールの高速な磁気ダイナミクスを活かしたスイッチング機構が引き出せることを示しました。

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Mn3Sn/重金属(HM)素子におけるスピン流を用いた二つの磁気スイッチング機構。内因性機構によるスイッチングでは電流印加時にスピン流が磁気秩序に直接作用するのに対し、温度アシスト機構によるスイッチングでは電流印加中に磁性秩序が失われる。

本研究では、カイラル反強磁性体Mn3Sn薄膜を用いた素子において、SOTによる磁気記録特性がMn3Snの膜厚によってどのように変化するかを調べました。その結果、膜厚を薄くして発熱の影響を抑制することで、磁気スイッチング機構が、発熱と冷却過程に支配される「温度アシスト機構」から、スピン流が反強磁性秩序を直接制御する「内因性機構」へと移行することが明らかになりました。内因性機構による書き込みでは、反強磁性体の高速な磁気ダイナミクスを活用できるため、温度アシスト機構よりも短い電流パルスでのメモリ動作や、大幅な省エネルギー化が期待されます。本成果は、反強磁性体の超高速磁気ダイナミクスを活用した新しい不揮発性メモリ技術の実現に向けた重要な基盤となるものです。

本研究成果は、2026年7月13日付で国際科学雑誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。

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(公開日: 2026年07月17日)