鉄系超伝導体の鉄原子の振動から電子分布の対称性を読み解く
兵庫県立大学の河智史朗助教および小林寿夫教授らの研究グループは、東京大学物性研究所の山浦淳一准教授、および東北大学、物質・材料研究機構、日本原子力研究開発機構、高輝度光科学研究センター、東京科学大学と共同で、鉄系超伝導体において超伝導が発現する組成と磁気秩序が現れる組成で、鉄原子の振動に明確な違いがあることを見いだしました。

(a) ヒドリド置換鉄系超伝導体LaFeAsO1–xHx における鉄(Fe)由来のフォノン状態密度(PDOS)のエネルギー依存性(x=0.35 および0.51)。緑で示したコブは、x=0.35 で顕著である一方、x=0.51 では強く抑制される。
超伝導は、電気抵抗がゼロになるだけでなく、磁場を内部から排除する「完全反磁性」を示す特異な量子現象です。なかでも鉄系超伝導体は、銅酸化物超伝導体に次ぐ高い超伝導転移温度を示す物質群(高温伝導体)として発見以来注目され、現在でも研究が進められています。
同研究グループは、大型放射光施設SPring-8の極めて明るく、パルス状で単色のX線を活用した手法により、鉄系超伝導体LaFeAsO1–xHxのx>0.3の領域に着目して、鉄原子の振動だけを選択的に調べました。その結果、超伝導が発現する組成(x=0.35)と磁気秩序が現れる組成(x=0.51)の間で、鉄原子の振動の現れ方に明確な違いを見いだしました。理論計算との比較から、この差が鉄原子周りの電子分布の対称性の違いと整合することを示しました。この結果は、超伝導や磁気秩序が確立する前段階での電子状態に関する新たな知見を与え、それらの成り立ちを解明するための手がかりとなります。
本成果は物性物理学の国際学術誌 Physical Review B に掲載され、編集部が注目度・重要性・明快さの観点から選定する Editors’ Suggestion に選ばれました。
兵庫県立大学発表のプレスリリース発表論文
- 雑誌名: Physical Review B
- 題 名: Doping-dependent Fe phonon dynamics in LaFeAsO1−xHx studied by 57Fe nuclear resonant inelastic scattering
- 著 者: Shiro Kawachi, Haruhiro Hiraka, Jun-ichi Yamaura, Soshi Iimura, Hiroki Nakamura, Satoshi Tsutsui, Yoshitaka Yoda, Masahiko Machida, Hideo Hosono, and Hisao Kobayashi.
- DOI: 10.1103/7zd9-5t9z
関連ページ
- 東京大学物性研究所 山浦研究室
- 2025.10.22 物性研ニュースフォノン熱ホール効果の磁場角度依存性の観測に成功
- 2024.12.13 プレスリリース室温で情報の読み書きが可能な交代磁性体(「第三の磁性体」)を発見―超高密度・超高速な次世代の情報媒体に―
- 2024.04.25 物性研ニュース新しい強誘電体の開発に向けて 〜高圧合成とマテリアルズ・インフォマティクスの協同〜
- 2024.04.12 プレスリリースMOFのハイパーオクタゴン格子でゆらぐスピン ―量子計算の舞台となる物質の開発を次の次元へ―
(公開日: 2026年02月04日)
