木村隆志准教授ら、ARIM「秀でた利用成果」の優秀賞を受賞
東京大学マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点が参画する、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM: Advanced Research Infrastructure for Material and Nanotechnology)において令和7年度の「秀でた利用成果」(注)が選定され、東京大学物性研究所の木村隆志准教授らの利用成果が優秀賞を受賞しました。この賞は、年間約3,000件ある利用成果の中から8件が選出、同事業のセンターハブである物質・材料研究機構から2025年10月20日に発表されました。成果発表会ならびに表彰式は東京ビッグサイトで開催される第25回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2026)にて2026年1月28日に行われます。成果発表会は最優秀賞を選定する審査を兼ねており、同日中に選定され表彰されます。
受賞した利用成果および、研究開発メンバーは以下です。
- 「X線光学素子開発のための新たな微細加工プロセスの検討 微細加工を活用したX線イメージング技術の高度化」
- 三田 吉郎(東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授)
木村 隆志(東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター軌道放射物性研究施設 准教授/データ統合型材料物性研究部門 准教授)
竹尾 陽子(東京大学物性研究所 助教)
島村 勇徳(東京大学物性研究所(研究当時))
櫻井 快 (東京大学物性研究所 博士課程)
吉永 享太 (東京大学物性研究所 博士課程)
中田 勇宇(東京大学物性研究所 博士課程)
永山 裕一 (東京大学物性研究所 博士課程)
幾原 雄一(東京大学大学院工学系研究科総合研究機構 教授)
可視光と比較して2桁以上波長の短いX線を利用した顕微鏡では、高い空間分解能で物性分析を実現可能な反面、光学素子に非常に高い精度が求められます。研究グループでは、東京大学ARIM拠点代表者の幾原雄一教授、同拠点微細加工部門(武田先端知ビルクリーンルーム)運営責任者の三田吉郎教授の支援を受け、超高速大面積電子線描画装置を代表とする先進半導体プロセス装置群を活用することで、こうした課題に挑戦してきました。今回、開発した超精密光学素子を大型放射光施設SPring-8に設置した軟X線顕微鏡の波面検出や試料計測に導入し、細胞など様々な測定対象の高分解能化学イメージングに応用可能なことを実証いたしました。
現在、最先端のリソグラフィ技術では波長13.5 nmの極端紫外光が活用され、次世代技術としてより波長の短い軟X線域でのリソグラフィも議論されています。そのようなリソグラフィ装置では、光学系に対して極めて高い精度が要求されます。本成果は顕微鏡への応用に留まらず、さまざまな場面への波及効果も期待されます。
工学系発表のニュース補足
(注)ARIMの秀でた利用成果の選定基準は以下の通りです ① ARIMの活用・支援が大きな効果をもたらしたもの、② イノベーションの創出にあたって大きな影響が期待できるもの、③ 産業界・大学・公的機関の連携により大きな成果が得られたもの。
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