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橋本大輔氏(井上研M1)が日本生物物理学会前夜祭の優秀ポスター賞を受賞

井上研究室M2の橋本大輔氏が、9月23日に奈良県コンベンションセンターで行われた第63回日本生物物理学会(9月24日〜26日)の前夜祭にて優秀ポスター賞を受賞しました。これは、若手間の国際交流促進を目的に、生物物理若手の会により日本生物物理学会の前日に開催されたもので、ポスターセッションで発表された54件から、優秀な発表を行ったもの4名に授与されます。

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右側が受賞した橋本氏

受賞対象となった発表タイトルは「AI-ロボット協働システムによるCapChR2機能最適化」です。

橋本氏は、AI駆動型タンパク質工学の実現を目指し、自動実験システムの構築に関する研究発表を行いました。近年、生命科学の研究現場ではAI技術の導入が急速に進んでおり、分子構造解析や新規分子設計など、これまで人手に依存していた多くの作業が自動化・知能化されつつあります。特に、深層学習を活用した構造予測モデル「AlphaFold」によって、タンパク質の立体構造を高精度に予測する手法が確立されたことは、生命科学におけるAI応用の象徴的な成功例として知られています。

一方で、次なる大きな課題として注目されているのが「AIを用いたタンパク質機能の予測」です。 構造予測とは異なり、機能は環境依存性や多面的なダイナミクスを含む複雑な現象であり、AIが学習するための規格化され、定量的かつ多様な実験データが十分に存在しません。このデータ不足こそが、AIによる機能予測の精度向上を阻む主要なボトルネックとなっています。

この課題に対し橋本氏は、AIと自動実験技術を融合させることで、AIが次に必要とするデータを自律的に提案し、ロボットがそれを実行する—AI提案型自動実験システム「AI–ロボット協働システム」—の構築に取り組んできました。このシステムは、AIによる仮説生成(能動学習)と実験自動化を反復的に結合することで、効率的かつ体系的に機能データを収集することを目的としています。

今回の研究では、光受容タンパク質であるカルシウムイオン透過性チャネルロドプシン CapChR2 をモデルタンパク質として用い、変異体ライブラリの機能をハイスループットに測定する蛍光測定系を新たに確立しました。この測定系では、細胞内カルシウム濃度変化をリアルタイムで観測し、各変異体の応答特性を定量的に評価することが可能となっています。

これらの成果は、AIを活用した実験設計と自動計測を結合した新しいタンパク質研究の形を提案するものであり、将来的には、AIが計画・実行・学習を繰り返す自律的な研究プロセスの確立にもつながるものと期待されます。特に、自動実験によるデータ取得を現実的なレベルで実現した点が高く評価され、今回の受賞に至りました。

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(公開日: 2025年10月31日)