池田暁彦准教授(松田研、元・助教)が文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞
池田暁彦准教授(電気通信大学、松田(康)研、元・助教)が4月8日、令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を顕彰するもので、若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に贈られます。授与式は4月15日、文部科学省3階講堂にて行われました。
受賞対象となった研究は「超100テスラ強磁場におけるスピン格子相互作用の研究」です。
地磁気の1000万倍の強い磁場である1000テスラ超強磁場中では、物質の結晶状態が変貌し、物質・化学・生命に関わる新現象が発現すると期待されています。しかし実験・理論の困難さから、未踏領域として研究が進んでいません。100テスラを有に超える磁場が発生すると、磁場を生み出すコイル自体の爆発が避けられないことと、その発生時間の短さが、測定や再現性を困難にするためです。池田氏は、電磁濃縮法による室内発生世界最高記録1200テスラの達成(2018年)に貢献し、世界初の1000テスラ高速ひずみ計測法を開発しました。この手法は1000テスラに至るパルス強磁場下での新たなスピン状態測定法として利用することができます。さらにコバルト酸化物の磁歪計測を行い、600テスラまでに発現する異常な結晶状態を発見しました。そして、世界初の超100テスラX線実験法も開拓ました。本研究成果は、1000テスラにおける物質の構造安定性と、そこにおける電子スピンの役割を解明するものであり、今後、磁気を介した新材料の開拓に資すると期待されます。
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