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世界最強のポータブル磁場発生機を完成、77テスラで量子ビーム実験に成功

電気通信大学大学院情報理工学研究科の池田暁彦助教は、東京大学物性研究所松田康弘教授らと共同で、ポータブル超強磁場発生機PINK-01[1]を完成させました。PINK-01は可搬型であるため、量子ビーム施設での実験に利用できます。池田助教らはPINK-01をX線自由電子レーザー施設SACLA[2]に持ちこみ、理化学研究所放射光科学研究センターの久保田雄也基礎科学特別研究員ら、高輝度光科学研究センターの犬伏雄一主幹研究員らと共同で、世界最高超強磁場77テスラ[3]中で物質の結晶構造変化のミクロ観察に成功しました。今後、さまざまな物質における、結晶状態への磁場効果の解明が進むと期待されます。

電気通信大学発表のプレスリリース

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図1 PINK-01と量子ビームを利用した本実験の模式図
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図2 PINK-01の磁場波形
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図3 PINK-01をSACLAに持ち込んで行った、超強磁場中X線レーザービーム実験

論文情報

  • 掲載紙:Applied Physics Letters 120, 142403 (2022)
  • タイトル:Generating 77 T using a portable pulse magnet for single-shot quantum beam experiments
  • 著者:A. Ikeda, Y. H. Matsuda, X. Zhou, S. Peng, Y. Ishii, T. Yajima, Y. Kubota, I. Inoue, Y. Inubushi, K. Tono, M. Yabashi
  • DOI: 10.1063/5.0088134

用語解説

[1]PINK-01:
Portable INtense Kyokugenjibaの略。01は1号機を意味する。
[2] SACLA:
理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。2011年3月に完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用運転が開始され、利用実験が始まっている。大きさが諸外国の同様の施設と比べて数分の1とコンパクトであるにもかかわらず、1オングストローム(100億分の1メートル)以下という世界最短波長のレーザー生成能力を持つ。
[3]テスラ:
1テスラは地磁気の約2万倍の強さの磁場強度である。
(公開日: 2022年04月18日)