池田暁彦氏(松田康弘研元助教)が日本物理学会若手奨励賞を受賞
松田康弘研究室の池田暁彦元助教(現 電気通信大学助教)は、第18回(2024年)日本物理学会若手奨励賞(領域8)に選ばれました。同賞は、将来の物理学をになう優秀な若手研究者の研究を奨励するため、優れた研究を行なった若手研究者に贈られる賞です。池田氏は同賞の受賞にあたり、3月20日、日本物理学会2024年春季大会(オンライン)で受賞講演を行いました。
受賞内容は、「1000テスラひずみ計測法の開発によるLaCoO3の新規電子相の発見」です。
多自由度が相関する系における新規秩序化を見いだし、そのメカニズムを解明することは、現代の物性物理における最重要課題の一つです。また、未踏極限環境である1000テスラにおよぶ超強磁場中では、物質の電子状態や結晶状態が変貌し、新状態が発現する期待があります。しかし、実験・理論の困難さから科学の未踏領域として残されていました。
池田氏は10年にわたる研究で、1000テスラ超強磁場の発生や独自のひずみ計測法の構築を行い、これらを適用することで、スピン状態自由度を有するLaCoO3において600テスラに至る超強磁場までの磁場温度相図を探索し、多彩なスピン状態の秩序化が発現することを見いだしました。発見された新規秩序はスピン3重項励起子のボーズアインシュタイン凝縮(BEC)との関連性が指摘され、従来のLaCoO3の議論を現代化するものです。
今後LaCoO3の新規相をミクロに解明する研究が必要とされていますが、池田氏が開発中の、100テスラにおけるX線自由電子レーザー実験技術により、強相関物質の超強磁場状態の理解がさらに進展することが期待されます。
関連論文
- Spin state ordering of strongly correlating LaCoO3 induced at ultrahigh magnetic fields|Phys. Rev. B
- Two Spin-State Crystallizations in LaCoO3|Phys. Rev. Lett.
- Signature of spin-triplet exciton condensations in LaCoO3 at ultrahigh magnetic fields up to 600 T|Nat. Commun.
関連ページ
- 東京大学物性研究所 松田康弘研究室
- 電気通信大学 池田グループ
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