森初果教授が分子科学会賞を受賞
森初果教授が第13回(2022年度)の分子科学会賞を受賞しました。この賞は分子科学研究分野において特に独創的で新たな研究領域の創成に結びつく質の高い研究成果をあげ、分子科学の発展に長年寄与したと認められる研究者に分子科学会から与えられるものです。9月19日に慶応大学で開催された分子科学討論会にて授与式が行われました。
受賞対象となった研究テーマは「分子性物質における電子機能開拓」です。
分子を基盤としたπ電子系機能物質は、伝導性・磁性・誘電性等を併せ持ち外部刺激に対して巨大な応答を示す物質として、20世紀に人類が生み出した優れた機能物質群の一つとして広く認知されています。高度な機能性を持つ新奇分子性物質の発見と機能発現機構の学理構築は、21世紀の持続可能社会の建設に向けて、さらにその重要性を増しています。
森氏は、分子の物性パラメーター(酸化還元能、酸塩機能、分子の形状、分子軌道とエネルギー準位、キラリティー、水素結合・配位結合能、分子配列等)を巧みに制御する独自のアプローチによって多数の画期的な機能性分子性物質を開発し、1)強相関π電子系超伝導体の発見、2)電荷秩序系分子性導体の系統的なπ電子機能の制御と電場応答効果の発見、3)電子機能と水素機能が結合した新機能の創成という顕著な業績を挙げました。このように、独創的視点と挑戦的研究開拓によって分子性機能物質の研究を飛躍的に発展させ、幾多の画期的な業績を挙げており、当該分野の国際的リーダーの一人としても広く認知されています。
このような分子科学分野の開拓と学理構築に大きく寄与に対し、分子科学会賞が授与されました。
関連論文
- “A New Ambient Pressure Organic Superconductor Based on BEDT-TTF with Tc Higher than 10 K (Tc=10.4 K) “, H. Urayama-Mori, H. Yamochi, G. Saito, K. Nozawa, T. Sugano, M. Kinoshita, S. Sato, K. Oshima, A. Kawamoto,J . Tanaka, Chem. Lett., 17, 1988, 55-58.
- “Checkerboard-Type Charge-Ordered State of a Pressure-Induced Superconductor, beta-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6 “, S. Kimura, H. Suzuki, T. Maejima, H. Mori, J. Yamaura, T. Kakiuchi, H. Sawa, and H. Moriyama, J. Am. Chem. Soc., 128 (2006) 1456-1457.
- “Hydrogen bond-promoted metallic state in a purely organic single-component conductor under pressure”, T. Isono, H. Kamo, A. Ueda, K. Takahashi, A. Nakao, R. Kumai, H. Nakao, K. Kobayashi, Y. Murakami, and H. Mori, Nature Commun., 4, 1344(1-6) (2013).
- “Hydrogen-Bond-Dynamics-Based Switching of Conductivity and Magnetism: A Phase Transition Caused by Deuterium and Electron Transfer in a Hydrogen-Bonded Purely Organic Conductor Crystal”, A. Ueda, S. Yamada, T. Isono, H. Kamo, A. Nakao, R. Kumai, H. Nakao, Y. Murakami, K. Yamamoto, Y. Nishio, and H. Mori, J. Am. Chem. Soc., 2014, 136 (34).
- “Proton–electron-coupled functionalities of conductivity, magnetism, and optical properties in molecular crystals”, H. Mori, S. Yokomori, S. Dekura, A. Ueda, Chem. Commun., 2022, 58, 5668–5682.(invited article)
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- 東京大学物性研究所 森研究室
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