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X線自由電子レーザーによるチャネルロドプシン時分割構造解析

日程 : 2019年3月20日(水) 13:00 - 15:00 場所 : 物性研究所本館6階 第4セミナー室 (A614) 講師 : 西澤 知宏 所属 : 東京大学・大学院理学系研究科・生命科学専攻 世話人 : 井上 圭一 (04-7136-3230 (ex. 63230))
e-mail: inoue@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

ロドプシン類はバクテリアからヒトまで広く生物種に保存された光受容タンパク質であり,単細胞では光に応答して運動の方向を変える走光性などに,ヒトでは視覚における光受容といったような重要な機能に関わる。中でも藻類のもつチャネルロドプシン(ChR:channelrhodopsin)は特定の波長の光を受容することでイオンチャネルとしての機能を示し,特定の波長の光によって神経活動の制御を行う光遺伝学と呼ばれる手法など、多くの応用研究に使われており、注目を集めている。このため、チャネルロドプシンの構造情報は光遺伝学におけるツール開発にも有用なことから非常に重要な意味を持つ。現在までに,クラミドモナス由来のチャネルロドプシン2(CrChR2)を含むいくつかのChRの構造が報告されているが,そのいずれもがイオンの透過孔の閉じた「閉状態」に相当するため、ChRが光を受けた際に,どのような構造変化が生じてイオン透過経路が形成されるのかという部分は未だに理解されていない。

近年、X線自由電子レーザー(XFEL)と呼ばれる技術の登場によって,分子の構造変化をフェムト秒の時間分解能で明らかにできる方法が開発された。時分割シリアルフェムト秒結晶構造解析(TR-SFX:Time-Resolved Serial Femtosecond X-ray crystallography)と呼ばれるその方法では,光など特定の刺激と同期させて,高強度のX線自由電子レーザーパルス光を微小結晶に照射して回折像を収集することで,結晶中での分子の構造変化を観察することができる手法であり,直接構造を観察できる手法の中では最も優れた時間分解能をもつ。日本におけるX線自由電子レーザー施設であるSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)においてもバクテリアのもつプロトンポンプであるバクテリオロドプシンの構造変化を明らかにすることに成功しており,非常に多くの注目を集めている(Nango et al., Science, 2016)。

我々は,チャネルロドプシンの開状態に至る構造変化を明らかにするため,SACLAにおけるTR-SFXの実験を行い,発色団レチナールが光を吸収することで生じる,イオンチャネルの開閉に関わる重要な構造変化を明らかにすることに成功した。今回の講演ではそれらの結果に関して発表したいと思う。


(公開日: 2019年01月10日)