共進化する物性理論・物性実験と機械学習
日程 :
2025年10月2日(木) 3:00 pm - 4:00 pm
場所 :
物性研究所本館6階 大講義室(A632)
講師 : 大槻 東巳 所属 : 上智大学 理工学部 世話人 : 川畑 幸平・橋坂 昌幸講演言語 : 日本語
2016年後半から機械学習が物性物理学に盛んに応用されるようになった [1]。同時に対称性,不変性,繰り込み [1],量子物理学 [2] などのアイディアがニューラルネットワークの解釈や改良に提案されている。実際,昨年のノーベル物理学賞は物理学の概念を人工ニューロンに適用しニューラルネットワークを使った機械学習の基礎を築いたことに,またノーベル化学賞はたんぱく質の折りたたみ構造の予測を機械学習で高速化したことに授与された。
本講演では,物性物理学を例として画像認識や生成ネットワーク(変分オートエンコーダー,拡散モデルなど)がどのように物性物理学に生かされるかを,メゾスコピック系の磁気指紋から散乱状態やポテンシャル分布を予想する研究を例として解説する [3]。これは測定された物理量から物質のミクロな情報を取り出す,いわゆる逆問題を解いたことになる [4]。また,量子機械学習の利点(と欠点) [2] についても触れる。
最後に,多少大胆な話になるが人工知能と物性物理学の今後の展望についても触れたい。
[1] 解説論文として例えば,G. Carleo et al., Rev. Mod. Phys. 91, 045002 (2019); T. Ohtsuki, T. Mano, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 022001 (2020); JPSJ special topics, Machine learning physics, Ed. K. Hashimoto, R. Kaneko, T. Ohtsuki, J. Phys. Soc. Jpn. 94, issue 3 (2025). [2] I. Cong, S. Choi, M. D. Lukin, Nature Physics 15, 1273 (2019); G Budiutama et al., Phys. Rev. A 110, 012447 (2024). [3] S. Daimon et al., Nature Communications 13, 3160 (2022); N. Yokoi et al., arXiv: 2506.08617 (2025). [4] K. Kobayashi, T. Ohtsuki, arXiv: 2506.13210 (2025).
(公開日: 2025年07月23日)