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山室研の秋葉助教がハイドロジェノミクス奨励賞を受賞

11月26日、本郷キャンパス小柴ホールで行われた第2回ハイドロジェノミクス研究会にて、山室研の秋葉宙助教がハイドロジェノミクス奨励賞を受賞しました。ハイドロジェノミクスは、水素の性質を使いこなすための新たな水素科学を構築することを目的とした新学術研究(文部科学省科学研究費助成事業2018〜2022年度)で、この賞は、ハイドロジェノミクスの研究会において、口頭・ポスター発表の中から特に優秀な発表を行った概ね35歳までの若手研究者に贈られます。

授賞式の様子

受賞式の様子。左から:折茂慎一 領域代表(東北大学・教授)、志賀基之氏(日本原子力研究開発機構・研究主幹)、受賞者の秋葉氏と岡弘樹氏(早稲田大学)、常行真司氏(東京大学・教授)、大友季哉氏(KEK物質構造科学研究所 教授)

受賞対象となった発表は「PdPtナノ粒子中の水素原子の構造と拡散ダイナミクス」です。

金属のナノ粒子化は、触媒などの応用面だけでなく、サイズ効果や表面効果などによる基礎物性の変化という観点からも興味深く、研究対象となっています。秋葉氏は、PdPtナノ粒子中の水素原子の安定サイトと拡散挙動を中性子粉末回折および中性子準弾性散乱を用いて調べました。その結果、Pd0.8Pt0.2D0.36ナノ粒子のD原子はfcc格子間の正八面体(O)サイトと正四面体(T)サイトに占有され、TサイトはPtをドープしないPdナノ粒子よりも安定であることが明らかになりました。純粋なPtはほとんど水素を吸蔵しないため、これは意外、かつ興味深い結果といえます。また、各サイトにある水素原子の運動が観測されましたが、どちらの運動についても、Pdナノ粒子と比べて緩和時間が短く、活性化エネルギーが小さくなることが分かりました。特に速い運動に関しては低温でほとんど温度依存性を示さず、水素の拡散過程が熱活性型から量子トンネルに移行したことを示唆しています。水素原子のトンネル拡散は理論的には予想されていましたが、実際に観測された例はほとんどなく、本結果は基礎物性物理的に非常に重要な証拠を示しました。これらの理由から、本研究を進めてきた秋葉氏に本賞が授与されました。

関連論文

  • H. Akiba, H. Kobayashi, H. Kitagawa, K. Ikeda, T. Otomo, T. Yamamoto, S. Matsumura and O. Yamamuro “Structural and Thermodynamic Studies of Hydrogen Absorption/Desorption Processes on PdPt Nanoparticles” J. Phys. Chem. C, 123, 9471-9478 (2019). DOI: 10.1021/acs.jpcc.8b11380

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(公開日: 2019年12月06日)