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榊原研の橘高俊一郎助教が凝縮系科学賞を受賞

榊原研究室の橘高俊一郎助教が凝縮系科学賞を受賞し、11月27日に東京大学本郷キャンパス小柴ホールで表彰式が行われました。この賞は、凝縮系科学に従事する優れた若手研究者を奨励することを目的に、青山学院大学(現 岡山大学特任教授)の秋光純教授と東京理科大学の福山秀敏教授により2006年に創設された賞で、物理・化学・材料科学にわたる、広い意味での凝縮系科学の研究に従事する若い研究者(博士学位取得後10年以内の者)の中から、顕著な業績をあげた者に与えられます。

授賞式の様子

表彰式の様子。左から:秋光純同賞運営委員長、受賞した橘高俊一郎氏、水野英如氏、永長直人同賞選考委員長。

受賞対象となった研究は「極低温精密比熱測定による超伝導ギャップ構造の決定」です。1979年以来、従来のBCS理論の枠組みを超えた非従来型超伝導が数多く発見されており、それらの超伝導発現機構の解明は物性物理学の重要課題です。非従来型の超伝導ギャップは多くの場合、特定の波数方向でゼロになる「ノード」を持ち超伝導ギャップに構造があります。その構造が超伝導発現機構を解明する鍵となりますが、超伝導ギャップ構造を実験的に決めるのは容易ではありません。

橘高氏は、超小型温度計の導入や外部ノイズ対策など装置に数々の改良を加え、0.06 K以下の極低温まで比熱の磁場角度依存性を高精度に測定できる世界最高水準の装置を完成させ、これを用いて非従来型超伝導体のギャップ構造を次々と解明し、これらの超伝導の理解を大きく深化させました。中でも、異方的d波超伝導であると長年考えられてきた重い電子系超伝導体CeCu2Si2(Tc = 0.6 K)において極低温までの磁場中比熱の精密測定を行い、小さいフルギャップが存在している事を発見したことには大きな意義があります。重い電子系においてフルギャップのs波超伝導が実現しているとすれば、これまでの常識を覆すこととなり、多くの研究者に強烈なインパクトを与えることになります。さらに、p波超伝導体と考えられているSr2RuO4では、超伝導ギャップが水平ラインノードを持ち、p波とは矛盾することをNMR実験に先立ち指摘しました。

これらの成果は、非従来型超伝導体の研究に大きな進展をもたらしたばかりでなく、極低温精密測定から得られる知見の新しい可能性を示したことからも、凝縮系科学賞に相応しいと認められました。

関連論文

  • [1] S. Kittaka, Y. Aoki, Y. Shimura, T. Sakakibara, S. Seiro, C. Geibel, F. Steglich, H. Ikeda, and K. Machida “Multiband superconductivity with unexpected deficiency of nodal quasiparticles in CeCu2Si2Phys. Rev. Lett. 112, 067002 (2014).
  • [2] S. Kittaka, Y. Shimizu, T. Sakakibara, Y. Haga, E. Yamamoto, Y. Onuki, Y. Tsutsumi, T. Nomoto, H. Ikeda, and K. Machida “Evidence for chiral d-wave superconductivity in URu2Si2 from the field-angle variation of its specific heat” J. Phys. Soc. Jpn. 85, 033704 (2016).
  • [3] S. Kittaka, S. Nakamura, T. Sakakibara, N. Kikugawa, T. Terashima, S. Uji, D. A. Sokolov, A. P. Mackenzie, K. Irie, Y. Tsutsumi, K. Suzuki, and K. Machida “Searching for gap zeros in Sr2RuO4 via field-angle-dependent specific-heat measurement” J. Phys. Soc. Jpn. 87, 093703 (2018).

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(公開日: 2019年12月02日)