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瀧川研の谷口貴紀氏、中辻研の鈴木慎太郎氏、第11回物性科学領域横断研究会ポスター賞を受賞

11月17、18日に行われた第11回物性科学領域横断研究会(領域合同研究会) にて、瀧川研究室D3の谷口貴紀氏が最優秀ポスター賞を、中辻研究室D3の鈴木慎太郎氏がポスター賞を受賞しました。この研究会は、物性科学に関連した9つの新学術領域研究が合同で開催するもので、各領域の研究内容を専門外の研究者や大学院学生に対し解説し、領域間のシナジー効果を高めると共に、物性科学のホットな話題を2日間で概観することを目的に行われています。今回は100件を超えるポスター発表があり、その中から特に優秀な発表に対して、本賞が贈られました。

左から:中辻知教授、鈴木慎太郎氏、谷口貴紀氏、瀧川仁教授(物性研所長)
左から:中辻知教授、鈴木慎太郎氏、谷口貴紀氏、瀧川仁教授(物性研所長)

谷口氏の受賞対象となった発表は「PrTi2Al20の四極子相図-NMRと磁化の比較-」です。PrTi2Al20は3価のプラセオジウム・イオンの周りをアルミニウム原子が籠状に取り囲む結晶構造を持っています。結晶場の基底状態ではプラセオジウム4f 電子の磁気双極子が消失していますが、電気四極子や磁気八極子などの高次多極子の自由度が低温で示す多彩な物性が注目されています。谷口氏らは、磁場の方向を変えながらアルミニウム原子核の核磁気共鳴(NMR)実験及び磁化測定を行い、方向の磁場下で強四極子秩序に伴う内部磁場の対称性の破れを微視的に観測するとともに、方向、方向の磁場下で新しい磁場誘起相転移を発見し、異方的な温度-磁場相図を作成しました。

従来の磁場依存性のない四極子間相互作用のモデルでは、磁場を方向、方向に印加した場合の磁場誘起相転移は説明できません。そこで、首都大学東京の服部一匡准教授との議論で、新たに磁場に依存した四極子間相互作用を提案し、相図を説明することができました。

この物質は高圧下で超伝導転移温度が急激に増大することが知られており、NMRを活用した手法によって更なる研究の発展が期待されます。

 

鈴木氏の受賞対象となった発表は「価数揺動系α-YbAlB4における非弾性中性⼦散乱測定とその磁場依存性」です。価数揺動と呼ばれる価数が時間的に揺らぐことによって整数値から離れた中途半端な値をとる性質は、イッテルビウム(Yb)など希土類を含む金属間化合物で観測されています。一方、希土類が整数に近い価数を取る金属間化合物の場合、希土類サイト上の局在したスピンが伝導電子との相互作用により遍歴性を獲得し、電子の有効質量の増大が見られます。こうした系を重い電子系と呼び、通常、価数揺動の振る舞いと共存しません。

近年、Yb系初の重い電子超伝導体β-YbAlB4が発見され、価数揺動状態と異常金属状態が共存する特異な物質であることから、磁気的な量子臨界点の枠組みを超えた、新たな量子臨界現象と考えられ関心を集めています。こうした中、近年その構造異性体でかつ同様に価数揺動系であるα-YbAlB4においても、磁場印加による異常金属状態が発見され、その起源についても大きな注目を集めています。鈴木氏は、非弾性中性⼦散乱によってYb原子の持つスピン同士の微視的な相関を測定しました。入念な解析の結果、この系の異常金属状態はスピン相関によるものではない全く新しいタイプの起源に基づくことを発見しました。


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(公開日: 2017年11月27日)