J-Physics2017にて、瀧川研の谷口貴紀氏、中辻研のイクラス・ムハマンド氏がベストポスター賞を受賞
9月24日から28日まで行われた国際会議J-Physics2017にて、瀧川研の谷口貴紀氏(D3)、中辻研のイクラス・ムハマンド氏(M1)がベストポスター賞を受賞しました。多極子伝導系の物理をテーマにした5カ年プロジェクトであるJ-Physicsが主催した国際会議において、90件以上のポスター発表がありました。その中から特に優秀な業績に対してベストポスター賞が授与されました。

左端が中辻研のイクラス氏、中央が瀧川研の谷口氏
谷口氏の受賞対象となった発表は”The observation of the field induced transition in PrTi2Al20です。PrTi2Al20は3価のプラセオジウム・イオンの周りをアルミニウム原子が籠状に取り囲む結晶構造を持っています。結晶場の基底状態ではプラセオジウム4f電子の磁気双極子が消失していますが、電気四極子や磁気八極子などの高次多極子の自由度が低温で示す多彩な物性が注目されています。谷口氏らは、磁場の方向を変えながらアルミニウム原子核の核磁気共鳴(NMR)実験を行い、<111>方向の磁場下で強四極子秩序に伴う内部磁場の対称性の破れを微視的に観測するとともに、<100>方向の磁場下で新しい磁場誘起相転移を発見しました。この物質は高圧下で超伝導転移温度が急激に増大することが知られており、NMRを活用した手法によって更なる研究の発展が期待されます。
イクラス氏の受賞対象となった発表は”Doping dependence of the Anomalous Transport Properties of Mn3Sn”です。磁性体であるマンガン三スズ(Mn3Sn)は反強磁性体として初めて異常ホール効果を示し、しかも、室温で実現することで注目されている物質です。イクラス氏は共同研究者と協力してこのMn3Snを用いて、反強磁性体で初めて自発的な巨大異常ネルンスト効果を発見、磁化当たりで100倍大きい熱起電力特性を持つことを示しました。また同物質内にワイル粒子が存在することを発見、室温で10 ミリテスラの小さな外部磁場により、そのワイル粒子を制御可能であることを示しました。これらの成果はエレクトロニクスに大きなパラダイムシフトを起こす重要な成果として高く評価されました。
関連サイト
- J-Physics2017
- 東京大学 物性研究所 瀧川研究室
- 東京大学 物性研究所 中辻研究室
- 2017.9.26 プレスリリース
「ワイル磁性体」を世界で初めて発見 ーワイル粒子で駆動する次世代量子デバイス実現へ道筋ー
- 2017.7.15 プレスリリース
磁性体を用いて熱から発電を可能にする新技術ー反強磁性体での巨大な異常ネルンスト効果の発見ー