松田巌教授が日本ホウ素・ホウ化物研究会賞の学術賞を受賞
松田巌教授が2026年2月21日から22日にかけて東北大学片平キャンパスで開催された第18回日本ホウ素・ホウ化物研究会にて学術賞を受賞しました。この賞はホウ素・ホウ化物に関連する学術研究を行い、その業績が特に優秀な者に授与されるものです。
受賞対象となった研究は「2次元ホウ素マテリアルの創製と物性開拓」です。
松田巌氏は表面科学および原子層科学を専門としています。これまで固体表面吸着層や原子層を成長・合成し、その電子状態について放射光を用いたX線分光で調べてきました。その折、これまでに報告のなかった金属のホウ素同素体が2次元系で実現することが理論計算で予言されたのを受け、同氏は共同研究者と実際に銀基板上にホウ素の単原子層を作製しました。これを光電子分光法で観測すると金属状態であることが分かり、さらに電子状態の中にディラックフェルミオンを発見、その起源も理論的に明らかにしました。この研究成果が契機となり、2次元ホウ素マテリアルの探求が世界的に普及しました。本論文は、Web of Science 物理分野のTop 1% 論文として現在も多数引用され続けています。
その後、松田氏らはこれまでに報告のなかったホウ素化銅の合成を固体表面で作製すると、ノンシンモルフィック対称性を有した珍しい擬1次元構造や準周期を有した1次元鎖などを発見し、その物性も解明してきました。さらにディラックノーダル線を有したホウ素原子層の理論設計と合成も行い、現在は学会員と共同研究を行いながら産業展開を図っています。
このように豊富な原子層合成の経験と先端X線分光技術をもとに次々とホウ素マテリアルの創製と物性開拓を行いながら、その一方で2次元ホウ素の著書を出版するなど教育と分野拡大にも大きく寄与しています。そこで、同氏のこれまでのホウ素・ホウ化物の学術研究を高く評価することに加え、今後の分野発展への貢献を期待して学術賞が授与されました。
関連論文
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- Xiaoni Zhang, Masashige Miyamoto, Mei Yuan, Yuki Tsujikawa, Kazuki Yamaguchi, Masafumi Horio, Kenichi Ozawa, Kunio Yubuta, Takahiro Kondo, Iwao Matsuda, Fermi Edge of Semimetallic Borophane Sheets and its Reduction by a Porous Structure, J. Phys. Chem. Lett. 15, 9349 (2024).
- Yuki Tsujikawa, Xiaoni Zhang, Kazuki Yamaguchi, Masahiro Haze, Takeru Nakashima, Arpita Varadwaj, Yusuke Sato, Masafumi Horio, Yukio Hasegawa, Fumio Komori, Masaki Oshikawa, Masato Kotsugi, Yasunobu Ando, Takahiro Kondo, Iwao Matsuda, Quasi-Periodic Growth of One-Dimensional Copper Boride on Cu(110), Nano Letters 24, 1160 (2024).
- I. Matsuda and K. Wu ed., 2D boron: Boraphene, Borophene, Boronene (Springer, 2021). 他
- 日本ホウ素・ホウ化物研究会
- 東京大学物性研究所 松田巌研究室
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