小林研(D2)姜 東彦氏、チェコHiLASEセンター滞在報告
小林研究室の姜 東彦(カン ドウオン)氏が物性研究所海外学生派遣プログラムを利用して、チェコ共和国HiLASE(hi-tech laser research centre)に2025年9月22日から11月1日まで研究滞在してきました。このプログラムは2017年度から始まったもので、海外での共同研究を通じて、豊かな経験を持った国際的な活躍が期待できる人材を育成することを目的として、大学院生を海外の研究機関に数ヶ月間派遣しています。
姜 東彦(小林研究室D2)
概要
私は40日間チェコ共和国に滞在しながらHiLASE(hi-tech laser research centre)に訪問し、ハイパワーレーザーの開発を行った。そこでは2090 nmの波長をもつシード光を用意するためにHo添加ファイバーを用いてオシレーターの作製を行った。
活動内容
約1ヶ月間の派遣期間においては、主にHo添加ファイバーオシレーターの構築およびモード同期技術の開発に注力した。これはHo thin diskハイパワーレーザーの種光となる予定である。しかし、Hoファイバーのゲインピークは2060 nm付近に存在するため、これまで2090 nm波長で発振するモード同期レーザーは存在しなかった。我々はNon-PM型とPM型という異なるファイバーを用いてオシレーターを試作し、モード同期特性と出力スペクトルの評価を行った。効率的な測定のために実験系が設計されており、その点も大きな学びとなった。この一連の研究を通じて原理を実践的に学ぶことができ、基礎技術への理解や実験系設計のノウハウを学ぶ貴重な機会となった。
また、パルスエネルギーが数mJを超える2 µm波長のHo thin diskレーザーを見学する機会も得た。特に興味を抱いたのは冷却方法であり、Thin disk装置のセルの設計図を参照しながら、どのような構造で冷却が行われているかについて詳細な議論を行った。この知見は、今後のハイパワー実験を計画・実行する上で貴重な知識となった。
滞在期間中、セミナー参加や活発なディスカッションを積極的に行った。特に、現地でセミナーを実施する機会を得て、英語での発表と議論を行った。多国籍なチームとの議論を通じて実験上の課題を共有し、解決へと導くプロセスを経験できたことは大きな収穫である。滞在を通して継続的に英語を使用したことで、語学力の向上にも繋がった。また、HiLASEにおける徹底した安全管理や、大規模レーザーシステムを支えるインフラ環境を目の当たりにしたことは、世界トップレベルの研究現場の雰囲気を肌で感じ、研究者としての視野を大きく広げる貴重な経験となった。
チェコに到着した当初は、慣れない環境で不安も大きかった。通常、学生の派遣は大学の研究室に行くことが多いが、今回は研究所へ一人で行くため、自分だけで研究を進められるかという心配もあった。研究所で同僚たちに初めて会った時も、最初は少し気まずさを感じた。しかし、一緒に実験や会話をする中で自然と仲良くなり、次第に楽しく研究に集中できるようになった。また、週末には新しい場所を訪れたり、現地の食事や人々に触れたりして、リフレッシュすることもできた。物性研究所の支援のおかげで、このような良い機会を得られたことに感謝したい。この経験は、これからの研究生活で必ず役に立つと思う。
今後は、派遣先で試みたソリトンモード同期や熱対策の知見を自身の実験系に導入し、課題となっているレーザーの高出力化に取り組んでいきたい。また、今回の派遣で得た知見と人的ネットワークを活かし、今後研究者として国際的な視野を持ち、世界をリードする研究成果を創出できるよう研究活動に取り組んでいきたい。
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