田中未羽子助教(井手上研)がエヌエフ基金研究開発奨励賞を受賞
井手上研究室の田中未羽子助教が2025年度のエヌエフ基金研究開発奨励賞を受賞しました。同賞は革新性と独創性が高く、かつ科学や技術の進歩、産業発展に貢献する研究開発活動を顕彰し、研究開発のさらなる発展を担う満35才以下の者に授与されるものです。第12回の募集分野は「先端計測」「環境・エネルギー」「新価値創成」の3分野が対象でした。11月6日に受賞者による研究発表、11月21日に一橋講堂にて表彰式が行われました。
受賞対象となった研究は「超伝導マイクロ波共振器と原子層超伝導体の結合デバイスを用いた新奇超伝導機構の発見」です。
原子層同士がファンデルワールス力で弱く結合した原子層物質は、剥離することで単原子層薄膜を容易に得ることができ、任意の積層構造を作ることが可能であるという特長から、物性を制御性良く調べる物質系として関心を集めています。例えば2枚のグラフェンを特定の角度だけずらして重ねると発現する超伝導など、バルク超伝導体では発現しないエキゾチックな新現象が次々に発見されており、精力的に研究されています。しかし、原子層物質は薄く面積が小さいためバルク超伝導体で従来行われてきた磁化測定や比熱測定は不可能であり、物性評価手法が非常に限られているという課題がありました。
田中氏は、原子層超伝導体の新規測定手法の確立と、それを用いた新奇量子物性・機能性の開拓を行いました。そして原子層超伝導体の慣性インダクタンス測定手法を確立し、超伝導におけるバンド幾何の寄与を実証しました。これらは原子層物質における新奇現象の開拓に大きく貢献すると考えられます。このような研究開発の実績が評価され受賞に至りました。
関連論文
- 雑誌名 : Nature 638, 99–105 (2025)
- 題名 : Superfluid Stiffness of Magic-Angle Twisted Bilayer Graphene
- 著者名 : Miuko Tanaka, Joel ˆI-j. Wang* , Thao H. Dinh, Daniel Rodan-Legrain, Sameia Zaman, Max Hays, Aziza Almanakly, Bharath Kannan, David K. Kim, Bethany M. Niedzielski, Kyle Serniak, Mollie E. Schwartz, Kenji Watanabe, Takashi Taniguchi, Terry P. Orlando, Simon Gustavsson, Jeffrey A. Grover, Pablo Jarillo-Herrero*, and William D. Oliver*(*責任著者)
- DOI:https://doi.org/10.1038/s41586-024-08494-7
関連ページ
- 第14回(2025年度)研究開発奨励賞|エヌエフ基金
- 東京大学物性研究所 井手上研究室
- 2025.02.06 物性研ニュース 量子幾何効果に基づく新しい超伝導を実証 ―精密量子計測を用いて2次元物質の物理に新たな展望―
