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山本哲也氏(野口研D2)が日本生物物理学会学生発表賞を受賞

野口研究室D2の山本哲也氏(野口研D2、慶應大・院理工)が、9月24日から26日にかけて奈良県コンベンションセンターで行われた「第63回日本生物物理学会」にて日本生物物理学会学生発表賞を受賞しました。この賞は、応募書類と日本生物物理学会の年会において行われた英語口頭発表を基に審査され、その中で優秀な発表を行った学生に授与されるものです。

受賞対象となった発表は「Simulation of oxygen diffusion in blood flow (邦題:血流中の酸素の拡散のシミュレーション)」です。

血液の主成分である赤血球は血管を流れ、毛細血管へ到達すると、運搬してきた酸素を血液中へ放出します。その後、酸素は拡散によって移動し、血管壁を通過して周辺の組織へと浸透することで、細胞に酸素が供給されます。このような酸素輸送に関してはこれまで巨視的なスケールで多くの研究が行われてきましたが、個々の赤血球の変形を含んだ現象の理解は未だ十分ではありません。後者の微視的なスケールで酸素輸送を調査することで、赤血球が持つさまざまな性質が酸素輸送に与える影響を解明したり、血中・細胞組織内の酸素濃度を正しく予測したりすることが可能になります。

山本氏は、血液の流れや赤血球の変形を動的に扱える数値モデルを用い、赤血球から細胞組織まで酸素が拡散する現象をシミュレーションしました。これに加え、同モデルを軸対称の移流拡散方程式に簡略化したモデルも併用し、両モデルを比較することで、赤血球のダイナミクスが酸素濃度の緩和過程に影響する可能性を示しました。

本研究の特筆すべき点は、血流や赤血球を三次元的かつ動的に扱える数値モデルを用いて酸素輸送を初めて解析したことです。生体内で酸素濃度を直接計測することには未だ限界があるため、本研究は従来の理論的・数値的研究を検証するうえで重要になると考えられます。これらの研究と優れた発表が評価され、同賞が授与されました。

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(公開日: 2025年10月21日)