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田中駿介助教(吉信研)が日本表面真空学会の若手学会賞を受賞

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吉信研究室の田中駿介助教(現:産業技術総合研究所 主任研究員)が日本表面真空学会の若手学会賞を受賞しました。この賞は、表面・真空科学に関連する学術分野ならびに産業分野において質の高い研究成果を挙げた若手研究者個人に授与されるもので、2025年は田中助教を含めた2名が選出されました。

受賞対象となった研究は「固体表面を利用した赤外パルス検出法の開発と超広帯域振動分光への応用」です。

赤外(IR)パルスを用いた振動分光法は、触媒・デバイスの機能発現に直結する原子・分子の動きを観測できる強力な手法です。IRパルス発生方法として、近年開発された二色レーザー誘起空気プラズマを用いた方法が、遠赤外光領域から中赤外光領域に渡る超広帯域発生できる点で注目を集めています。しかし、この超広帯域IRパルスを現在普及している固体結晶を用いた検出方法で評価すると、固体結晶のフォノンや位相整合による制約により評価できないエネルギー帯がスペクトルにギャップとして現れることが課題となっていました。そのため、このIRパルスの超広帯域性を活かした振動スペクトル計測は容易ではありませんでした。

田中氏は、固体表面を利用した反射配置での非線形光学応答を利用することにより、新たに二つの超広帯域IRパルスのギャップレス検出法を開発しました。一つは、金属表面からの第二高調波光を利用したIRパルスの時間領域検出であり、もう一つはGaAs表面からの和周波発生光を検出する周波数領域検出です。この二つを合わせることで、30〜3000 cm-1という広いエネルギー領域で振動スペクトル計測を可能にしました。加えて、このIRパルスを可視光パルスと同時にGaAsに集光し、GaAsから発生した和周波光を検出することで、GaAsの光学フォノンに対応する振動共鳴和周波スペクトルを観測することができました。これまで遠赤外光領域の振動共鳴和周波発生(VSFG)分光は、自由電子レーザーを使った研究例はありましたが、テーブルトップ型(小型)の光源を使った測定の報告はなく、今回が初めてだと考えられます。

本成果は、高い時間分解能をもって遠赤外光領域から中赤外光領域に存在する表面吸着系や分子系の振動モードを観測できる超広帯域振動分光法を開発したもので、これまでの計測手法では観測できなかった原子・分子の動きが検出可能になります。今後、多様な表面系・分子系における超高速ダイナミクスの解明が期待されます。

関連論文

  • R. Kameyama†, S. Tanaka†, Y. Murotani, T. Matsuda, N. Kanda, R. Matsunaga, and J. Yoshinobu, “Ultra-broadband detection of coherent infrared pulses by sum-frequency generation spectroscopy in reflection geometry”, Optics Letters, 49, 3978-3981 (2024).
    †: Equal contribution DOI: 10.1364/OL.530328
  • S. Tanaka, Y. Murotani, S. A. Sato, T. Fujimoto, T. Matsuda, N. Kanda, R. Matsunaga, and J. Yoshinobu, “Gapless detection of broadband terahertz pulses using a metal surface in air based on field-induced second-harmonic generation”, Applied Physics Letters, 122, 251101-251107 (2023). (Selected as a featured article).
    DOI: https://doi.org/10.1063/5.0153667

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(公開日: 2025年06月02日)