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世界最短グラフェンプラズモン波束の電気的発生・伝搬制御・計測に成功 ~テラヘルツ周波数の超高速信号処理の実現に貢献~

発表のポイント

  • 世界最短グラフェンプラズモン波束{パルス幅1.2ピコ秒(ピコ秒=1兆分の1秒)}をチップ上で転送することに成功しました。
  • プラズモンを制御することでテラヘルツ電気信号の位相・振幅を変調することに成功しました。
  • テラヘルツ電気信号を回路上で制御するための新たな方法を示す成果であり、超高速の信号処理実現に貢献することが期待されます。

発表概要

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、パルス幅として世界最短(1.2ピコ秒)となるグラフェンプラズモン(※1)波束(※2)を電気的に発生・伝搬制御することに成功しました。グラフェンプラズモンを利用することによりテラヘルツ信号の位相・振幅を電気的に制御可能であることを示した本成果は、従来のトランジスタを用いた電気回路技術とは異なる方法でのテラヘルツ信号処理を可能とするものであり、将来的に超高速の信号処理実現に貢献することが期待されます。

本研究は、国立大学法人東京大学及び国立研究開発法人物質・材料研究機構との共同で行いました。7月17日英国科学誌 Nature Electronics に掲載されました。

NTTのプレスリリース全文

図1

図1:実験の概略図。チップ上でパルス幅が1.2ピコ秒のTHz電気パルスをグラフェンに印加し、グラフェンプラズモン波束を発生・伝搬させ、その実時間波形をサブピコ秒の時間分解能で計測した。図中のhBNは六方晶窒化ホウ素。

論文情報

  • 雑誌名 : Nature Electronics
  • 題名 : On-chip transfer of ultrashort graphene plasmon wave packets using terahertz electronics
  • 著者名 : Katsumasa Yoshioka, Guillaume Bernard, Taro Wakamura, Masayuki Hashisaka, Ken-ichi Sasaki, Satoshi Sasaki, Kenji Watanabe, Takashi Taniguchi, and Norio Kumada
  • DOI:10.1038/s41928-024-01197-x

用語解説

(※1)グラフェンプラズモン :
プラズモンとは、電荷密度の振動であり、光のような波としての性質を有しながら、自由空間の光に比べて極めて小さな領域に電磁場を閉じ込められる特徴がある。特に、グラフェン中の自由電子の振動であるグラフェンプラズモンは、THz領域でロスが小さいことが知られており、さらに電子密度を変化させることにより波長や伝搬速度等を制御できる特徴がある。これまで電気的に発生されたグラフェンプラズモン波束の最短パルス幅は∼25ピコ秒であり(NTT調べ:Phys. Rev. Lett. 110, 016801 (2013))、初めてTHz領域に到達することができた。グラフェンプラズモンに関するさらなる詳細は別紙を参照
(※2)波束 :
本研究では、0∼2THzの広帯域な周波数成分を持つ超短電気パルスを使っているため、多数の波数の異なる波の合成であるプラズモン波束が生成されている。波束とは、限られた範囲にだけ存在する波のことをいい、移動する1個の波動のかたまりのようにふるまう。波束のパルス幅と波束がもつ周波数成分の関係はフーリエ変換で結ばれている。本研究では、原理実証の上で有利な波束の伝搬計測を行ったが、振幅と周波数が一定の連続波を使っても同様にプラズモン信号の振幅と位相が制御可能なことを示している。

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