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新井 陽介氏(近藤研D3)が日本放射光学会の学生発表賞を受賞

近藤研究室D3の新井陽介氏が、2023年1月7日から立命館大学びわこ・くさつキャンパスで行われた第36回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにて、JSR2023学生発表賞を受賞しました。この賞は、同年会・シンポジウムにて、将来性・独創性のある優秀な発表を行った学生に授与されるものです。

受賞対象となった発表は、「少数キャリア半金属CeXにおける強相関メカニズムの系統的な変化」です。

現代テクノロジーを支える機能物性の多様性は、秩序形成を伴った相転移の上に成り立っており、その応用や制御が科学技術の発展に欠かせません。この秩序状態からのズレに対する復元力として定義される素励起(ボソン)は、電子ボソン結合という形で伝導電子と協奏的に相互作用し、このとき形成される準粒子が超伝導や巨大磁気抵抗などの強相関現象を引き起こすことが知られています。したがって、この準粒子を特徴付ける相互作用を解明して理解することが物質科学の重要なテーマの1つとなっています。

本研究では、異常磁性を示す少数キャリア半金属CeX (X=P, As, Sb, Bi)における準粒子状態の違いに注目しました。CeXは温度・磁場・圧力といった外部環境に応じて多彩な磁気構造を形成します。なかでも CeSb の磁気相転移は特異に複雑で「悪魔の階段」と呼ばれ、磁場や圧力のない状況でも7回の転移が生じます。しかしながら、CeXの中でCeSbの隣に位置するCeAsは磁場や圧力のない状況で 1 回の転移しか示さず、CeSbと対照的に単純な磁気相転移を示します。本研究の結果、「悪魔の階段」を示すCeSbは4f結晶場励起と伝導電子の結合した「多極子ポーラロン」という準粒子が形成される一方で、その隣のCeAsでは伝導電子が4f結晶場励起だけでなく光学フォノンとも結合したCeSbと異なる準粒子状態が形成されることが明らかになりました。

本研究結果は電子構造のわずかな差異に基づいた相互作用の変化がCeXに存在することを示しており、こうした違いがCeXの異常磁性の発現機構に大きな影響を与えていることが示唆されます。

関連論文

  • Y. Arai et al., Nat. Mater. 21 410 (2022)

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(公開日: 2023年03月24日)