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遂に実現!複数の極限環境下での物質のふるまいを測定可能に ースピンと格子が織りなす多彩な全磁気相をマッピングー

大阪大学大学院理学研究科の大学院生の二本木克旭氏(博士後期課程)、木田孝則助教、萩原政幸教授らの研究グループは、東京大学物性研究所の金道浩一教授と上床美也教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科の井上克也教授、大阪公立大学大学院工学研究科の高阪勇輔助教、ネール研究所のJulien Zaccaro博士らと共同でキラル三角格子反強磁性体CsCuCl3の飽和磁場を超える磁場範囲で圧力下の磁気相図を作成することに成功しました(図1)。

fig1

図1(左):強磁場高圧力下磁化測定装置の概略図。パルス強磁場・高圧力発生装置の内部に試料と磁化検出コイルの両方を配置することで強磁場・高圧力下における微弱な磁化検出に成功。(右)三角格子反強磁性体CsCuCl3の磁場‐圧力相図。飽和磁場は、圧力増加に伴い高磁場側に移動し、最高圧力1.7ギガパスカルで40テスラまで到達。

三角格子反強磁性体では、磁性イオンの持つスピンが格子の幾何学的フラストレーションの影響を受けるため、特定の方向にスピンが並んだ状態を一意に決めることが困難になることが知られています。この時、スピンの向きを制御する磁場と格子を変形する圧力を三角格子反強磁性体に同時に加えることで、フラストレーションが抑制され、物質の磁気的性質の劇的な変化が期待されます。

今回、萩原教授らの研究グループは、最大磁場55テスラの強磁場と最高圧力2ギガパスカルの高圧力を同時に実現した極限環境下の実験装置を開発し、さらにLC法という従来とは全く異なる新しい磁化測定法を組み合わせたことで、三角格子反強磁性体が磁場と圧力によって様々な磁気相を誘起することを実験的に明らかにしました。この研究結果は、極限環境下において三角格子反強磁性体が見せる様々な磁気構造の理解につながります。

本研究成果は、国際学術誌Physical Review Bに、2022年5月13日(金)に公開されました。

大阪大学発表のプレスリリース

(公開日: 2022年07月04日)