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尾崎 文彦(吉信研D1)氏、日本物理学会の学生優秀発表賞を受賞

吉信研究室D1(研究当時M2)の尾崎 文彦氏が第77回年次大会(2022年)日本物理学会の学生優秀発表賞を受賞しました。この賞は物理学会大会において優れた講演を行った学生に授与されるものです。

受賞対象となった発表は「レーザー切断により調製したMoS2エッジ面の分光学的研究」です。

天然鉱物として存在する二硫化モリブデンMoS2は層状構造をもち、最近では単原子層ユニットにした時の特異な物性から電界効果トランジスタなど多岐にわたる応用が期待されています。一方、従来からMoS2は水素化脱硫触媒などの反応場として用いられています。MoS2基底面は分子不活性であることが知られており、これまでに反応の活性点が配位不飽和なエッジサイトであることが報告されています。エッジサイトに関する研究はナノスケールのプローブ顕微鏡や第一原理計算によって研究されてきましたが、スケールの小ささや規定した表面調製の難しさから、その化学的性質や電子状態についての分光学的研究はありませんでした。そこで、物性研究所小林研究室と共同で超短パルスレーザーを用いて単結晶MoS2を切断することにより縁ダレのないMoS2断面を作製し、ラマン分光および放射光による高分解能光電子分光を用いてエッジ面のみの電子状態を測定しました。

ラマン分光では、MoS2基底面ではあらわれないエッジに特有の振動モードが見られました。また光電子分光では、基底面では観測されないエッジに特有の低配位のMoの電子状態が観測されました。これは、最表面でのMo-S結合の欠損によるものと考えられ、40年以上前に提案されたエッジサイトの直接的な電子状態の観測に成功しました。この不飽和なMoサイトが反応において重要な役割を果たしていると推察され、このような基礎的は活性サイトの理解によって反応効率化のための触媒設計の指針になると期待されます。

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