可積分なスピン系における無数の保存量の構造を解明
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程2年の野澤優治大学院生と修士課程2年の深井康平大学院生は、XYZ模型(図1)と呼ばれる無数の保存量が存在するスピン系を解析し、それらの保存量の具体的な構造を明らかにしました。
XYZ模型の単純な場合である、スピンにとって特別な方向がない(等方的な)場合に関しては、保存量の構造が先行研究によって明らかにされていましたが、異方性が存在するより一般的な場合に関しては、構造の複雑さのために等方的な場合における解決から25年以上の間未解決の問題として残されていました。
研究グループは、異方性が存在する場合を含めた一般的な場合において、保存量の構成要素の比率(線形結合の係数)に規則性が存在することを発見しました。さらにその規則性を用い、無数の保存量を具体的に構成できることを証明しました。
本研究は広い範囲の可積分なスピン系において、新たな視点によって無数の保存量の構造を解明したものであり、保存量の数理的構造のさらなる理解や、量子多体系の非平衡現象の数値シミュレーションへの応用が期待される結果であると考えています。
本研究成果は、米国物理学会が発行する学術誌「Physical Review Letters」の2020年8月26日付けオンライン版で公開される予定です。
発表雑誌:
- 雑誌名:Physical Review Letters(8月26日オンライン版掲載予定)
- 論文タイトル:Explicit Construction of Local Conserved Quantities in the XYZ Spin-1/2 Chain
- 著者:Yuji Nozawa* and Kouhei Fukai
(公開日: 2020年08月24日)