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次世代放射光で期待されるコヒーレント軟X線を使った物性研究

日程 : 2019年8月5日(月) 14:00 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第一会議室 (A636) 講師 : 山崎 裕一 氏 所属 : 物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 世話人 : 原田 慈久(63401)
e-mail: harada@issp.u-tokyo.ac.jp

軟X線は多くの強相関物質や磁性体材料において構成元素である酸素や3d遷移金属元素の吸収端に対応するエネルギー領域にあり、その電子状態や磁気特性を高感度に検出できることから物性発現に関与する電子状態を解明する強力なプローブとなっている。特に、放射光から発生する軟X線のコヒーレント特性、短パルス性を活用すると、電子構造を高い時間と空間の分解能で実空間計測することが可能となる。

近年、我々はメゾスコピックな磁気構造体である磁気スキルミオンに着目して、軟X線散乱・回折による観測を行ってきた。磁気スキルミオンはトポロジカルな安定な磁気構造であるため、外乱要因に対して強く、電流や光など様々な外場によって制御できることからスピントロニクスデバイスへの応用が期待されている。例えば、カイラル磁性体鉄ゲルマニウム(FeGe)において、磁気スキルミオンが三角格子を形成する様子を観測し[1]、さらにコヒーレント軟X線イメージングによる磁気スキルミオンの実空間像を観測することにも成功している[2]。

次世代放射光ではコヒーレントフラックスが大幅に向上するため、より高い時空間分解能での実空間観測が可能になると期待される。電流印加による磁気スキルミオン運動の観測やマイクロ波と同期させた磁気イメージングによるマグノンの可視化などが例に挙げられる。また、磁気トモグラフィ計測による磁気スキルミオンの3次元構造解析などへの展開も期待される。一方で、高度な計測手法の実現には、先端的な情報技術を活用した解析技術を開発することも重要となってくる。本セミナーでは、現在取り組んでいる機械学習などの情報技術を融合させた解析手法も紹介し、次世代放射光で加速的な発展が期待されるコヒーレント軟X線を活用した物性研究の展望について示したい。

 

参考文献

[1] Y. Yamasaki et al., Phys. Rev. B 92, 220421(R) (2015)

[2] V. Ukleev, Y. Yamasaki et al., Quantum Beam Science 2, 3 (2018)


(公開日: 2019年07月24日)