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ポルフィリンの磁気的性質を利用した光物性と光機能~磁気キラル二色性とビタミンC検出用蛍光プローブを中心に~

日程 : 2019年7月24日(水) 13:30 〜 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 講師 : 石井 和之 先生 所属 : 東京大学生産技術研究所 世話人 : 松田康弘、尾崎泰助
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

新規電子構造の発見と解明は、新領域の開拓につながるだけでなく、新しい機能を開発する上で重要である。我々は、光合成のクロロフィルやヘモグロビンのヘムの基本骨格であるポルフィリンや、青色・緑色の染料・顔料、コピー機の電荷発生剤などとして利用されているフタロシアニンを対象とし、錯体化学・超分子化学を光化学・分子磁性と融合することで、新規分野の開拓、新機能創出を目指した以下の研究を展開している。

    ① 磁気キラル二色性 [1,2]

磁気キラル二色性(光学活性分子の光吸収が磁場の方向によって変化する現象)は、磁場中の光化学反応により片方の鏡像異性体の過剰を生み出すことができるため、生命のホモキラリティー起源の候補、光不斉合成法等として注目されている。我々は、大きなp電子軌道角運動量を有するポルフィリン分子同士が捻れた配置となるキラルJ会合体を用いることで、有機化合物における磁気キラル二色性を観測することに初めて成功した。さらに、光合成で光を捕集するクロロゾームのモデル化合物においても磁気キラル二色性観測に成功し、光合成における新規磁場効果の可能性を示した。

    ② ビタミンC検出用蛍光プローブ [3-6]

必須栄養素の一つであるビタミンC(アスコルビン酸)は、近年、副作用の無い抗がん剤としても注目されている。我々は、光励起三重項色素と二重項ラジカルから構成される光励起多重項状態を発見・解明してきたが、このスピン科学を蛍光プローブ開発に活用し、がん細胞内、及びマウス内におけるビタミンCを蛍光バイオイメージングすることに初めて成功した。

談話会では、上記研究に加え、我々が開発した放射性セシウム除染布や新学術領域「ソフトクリスタル」に関する研究成果も含めて、幅広く紹介する。

 

[参考文献]

(1) Y. Kitagawa, H. Segawa, K. Ishii, Angew. Chem. Int. Ed., 50, 9133 (2011).
(2) Kitagawa, T. Miyatake, K. Ishii, Chem. Commun., 48, 5091 (2012).
(3) Ishii, J. Fujisawa, Y. Ohba, S. Yamauchi, J. Am. Chem. Soc., 118, 13079 (1996).
(4) Ishii, J. Fujisawa, A. Adachi, S. Yamauchi, N. Kobayashi, J. Am. Chem. Soc., 120, 3152 (1998).
(5) Ishii, K. Kubo, T. Sakurada, K. Komori, Y. Sakai, Chem. Commun., 47, 4932 (2011).
(6) Yokoi, T. Otani, K. Ishii, Sci. Rep., 8, 1560 (2018).

 

【講師紹介】

石井和之先生は、錯体化学を基軸として様々な有機・無機複合体を光科学・スピン科学の観点から探求されています。物性研における量子物性、生体・分子機能、光科学、またそれらの融合研究との関連性も深く、大変興味深いお話しが伺えると思います。


(公開日: 2019年06月25日)