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光受容型膜タンパク質微生物型ロドプシンの機能の多様性の起源に迫る

日程 : 2018年8月23日(木) 2:00 pm - 3:00 pm 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 講師 : 井上 圭一氏 所属 : 東京大学物性研究所 世話人 : 談話会委員 杉野 修・松田 康弘
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

海洋や湖沼、河川、土壌などをはじめとする地球上の様々な環境中には、莫大な数の細菌や藻類などの微生物が棲息しているが、近年のゲノム研究の発展により、その多くが細胞内に「微生物型ロドプシン」と呼ばれる光受容型膜タンパク質を持つことが明らかとなってきている。これら微生物型ロドプシンは、我々ヒトを含めた動物の網膜中に存在する「動物型ロドプシン」と極めてよく似た7回膜貫通型構造を持ち、さらに同じビタミンAの誘導体であるレチナールを発色団としてタンパク質内部に結合している。そしてレチナールが光を吸収すると、全トランス型から13シス型への異性化反応を起こし、細胞内外へ輸送する光駆動型イオンポンプや、電気化学勾配に沿って双方向にイオンを輸送する光ゲート式イオンチャネル、走光性センサーなど非常にバラエティに富んだ生理機能が発現される。
その中で、我々はこれまでにこれら微生物型ロドプシンが7回膜貫通型構造および発色団レチナールからなる共通構造をもとに、どの様にしてこれほどまでに多様な生理機能の発現を達成するのか、その分子メカニズムについて、過渡吸収法や過渡回折格子法、赤外分光法などを用いた物理化学的研究を行ってきた。また最近では新たにNa+ポンプ型や内向きH+ポンプ型などの新奇なイオンポンプ型ロドプシンを独自に見出し、その輸送機構についても解明を進めている[1-3]。さらに2018年には既存の微生物型および動物型のいずれとも異なる新たなロドプシンファミリーが自然界に広範に存在することを明らかにし[4]、談話会ではこれら新奇分子を含めた微生物型ロドプシンの基礎研究から最新トピックス、さらにはオプトジェネティクスへの応用など、我々の研究と共に世界的な現状を含めて幅広く紹介する。

[1] K. Inoue et al., Nature Commun. 4, 1789 (2013)
[2] H. E. Kato et al., Nature 521, 48-53 (2015)
[3] K. Inoue et al., Nature Commun. 7, 13415 (2016)
[4] A. Pushkarev and K. Inoue et al., Nature 558, 595-599 (2018)


(公開日: 2018年07月31日)