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分数量子ホール系の素励起

日程 : 2023年7月5日(水) 3:00 pm - 4:00 pm 場所 : 物性研究所本館 大講義室(A632)・ZOOM同時開催(事前登録を下記リンク先にてお願い致します) 講師 : 橋坂 昌幸 氏 所属 : 東京大学物性研究所 世話人 : 中島多朗・川島直輝
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

分数量子ホール(FQH)効果は、2 次元電子系のホール伝導度が垂直磁場中でe2/hを単位とする有理分数値に量子化する現象である。FQH系は典型的な量子多体系で、そのバルク領域における最小の励起(素励起)は、分数電荷とエニオン統計(ボーズ統計・フェルミ統計のいずれとも異なる量子統計)を持つ準粒子・準正孔の生成である。またFQH系は2次元トポロジカル系で、その試料端には内部のトポロジカル秩序を反映した1次元エッジ状態が現れる。エッジ状態は1方向の伝導特性を持つ1次元電子系であり、それ自体がカイラル朝永ラッティンジャー液体と呼ばれる量子多体系として振る舞う。
2次元空間でエニオンの位置を交換した状態は、元の状態と量子力学的に区別できる。この組み紐操作(ブレーディング)を量子ゲートとして用いることで、エラー耐性を有するトポロジカル量子計算を実現できる可能性がある。2020年にFQH準粒子のエニオン統計性が実験で観測されたことをきっかけに、新しい量子情報技術研究のプラットフォームとして、FQH効果の研究が世界的に活性化している。
本講演では、準粒子が持つ分数電荷の計測実験、エッジ状態のカイラル朝永ラッティンジャー液体的性質の評価実験について紹介する。これらの実験は、FQH系においてエニオンをどうやって生成・輸送・観測するかについて、基礎となる知見を与える。FQH系を用いたトポロジカル量子計算に関する理論提案を参照しながら、FQH効果研究の現状と今後の課題について議論する。

【講師紹介】
橋坂先生は令和5年4月にナノスケール物性研究部門に着任され、精密な電気伝導測定技術、およびナノ加工技術を用いて、物質中の量子輸送現象についての実験的研究をされています。本講演では特に、分数量子ホール系における準粒子が持つ分数電荷の計測実験等についてご紹介いただけるものと思います。ぜひ皆さまご聴講ください。

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(公開日: 2023年06月06日)