特異な磁気状態を示す多軌道強相関物質の開拓
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp講演言語 : 日本語
電子同士が強く相互作用する物質中では、電子の電荷・スピン・軌道・格子といった複数の自由度が顕在化し、相転移現象や秩序構造の起源となります。また最近では、電子構造や磁気構造におけるトポロジーの概念が、新しい電子相開拓の鍵となることがわかってきています。我々は、こうした強相関やトポロジーが絡んだ電子相発現の舞台となる物質開拓を行っています。本講演では、遷移金属イオンMを含む単一分子性導体M(tmdt)2における強相関電子相の形成と、トポロジカル磁気相を伴うEuAl4に関する研究内容を中心に紹介します。遷移金属イオンMが有機配位子tmdtで挟まれたM(tmdt)2は、一種類の分子種の積層のみで伝導体を形成しており、電子相関に加え、Mを主体とするdpσ軌道とtmdtのpπ軌道のエネルギー差によって電子状態が特徴づけられます。これら軌道間のエネルギー差が小さいAu(tmdt)2では、反強磁性転移に向けて分子内電荷移動が生じており、軌道間の自己ドーピングによって誘起された特異な磁気秩序であることが明らかになりました。EuAl4は二種類の元素からなる比較的シンプルな結晶構造の金属間化合物ですが、Eu2+の局在スピンと伝導電子の結合により、温度・磁場・元素置換によって磁気スキルミオン格子相をはじめとする様々な磁気秩序相を示すことがわかってきました。本講演ではこれらの研究内容に加え、今後の研究展望についても発表する予定です。
【講師紹介】
高木先生は令和5年4月に凝縮系物性研究部門に着任され、固体中の電子が持つ複数の自由度が絡み合う新しい量子相を示す物質を実験的に研究されています。本日の講演では特に、遷移金属を含む分子性導体とトポロジカル磁気秩序を示す金属化合物についての研究をご紹介いただけるものと思います。ぜひ皆さまご聴講ください。
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