金ナノ粒子を標的の生体分子モーターに結合させ、分子の動きを追跡する１分子散乱イメージングでは、マイクロ秒の時間分解能とオングストロームの位置決定精度を達成することができる(1)。我々はこの手法を2つの回転分子モーターの複合体であるV-ATPaseに適用し、その回転運動を直接可視化することで、V-ATPaseがATP加水分解エネルギーを利用してナトリウムイオンを膜輸送する仕組みの一端を明らかにした(2)。本セミナーでは１分子計測法による生体分子モーター研究の概要、解明したV-ATPaseの回転機構について発表するとともに、最近取り組んでいるV-ATPaseを改造し新たな分子モーターをつくる試みについても紹介する。

(1) Ando J., et al, Biophys. J., 115 (2018)
(2) Otomo A., et al, PNAS, 118 (2022)