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「3次元ディラック物質Co3Sn2S2における光誘起カイラルゲージ場」「テラヘルツエレクトロニクスを用いたグラフェンにおける超高速光電変換過程の計測」

日程 : 2022年12月19日(月) 1:00 pm - 3:00 pm 場所 : Zoom 世話人 : 小林 真隆 (63387)
e-mail: kobayashi.masataka@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

1. 吉川 尚孝 氏 (東京大学 理学系研究科 島野研究室 助教)

【題目】
3次元ディラック物質Co3Sn2S2における光誘起カイラルゲージ場

【概要】
3次元の線形分散を示す3次元ディラック半金属やワイル半金属は、線形分散の交点(ディラック点・ワイル点)の周辺の電子が質量ゼロの相対論的な粒子として振る舞い、特異な伝導特性を示すことから注目を集めている。3次元ディラック半金属に円偏光を照射すると、光の周期電場がディラック電子と結合するカイラルゲージ場として働き、系の時間反転の破れに伴ってディラック点がワイル点ペアへと分裂するフロッケワイル半金属状態が実現することがフロッケ理論に基づいて提案された[1]。我々は、3次元ディラック電子系である常磁性相のCo3Sn2S2を対象に中赤外光ポンプ-テラヘルツ(THz)波プローブ分光を行い、円変光誘起の異常ホール効果が発現することを見出した。実験で得られたポンプ光の強度と周波数の依存性をCo3Sn2S2のフロッケ状態を記述する有効模型と比較すると、円偏光によるカイラルゲージ場がディラックバンドの分裂をもたらし、有限のベリー曲率が生じることで異常ホール効果が現れたことが示唆された[2]。
[1] S. Ebihara, K. Fukushima, and T. Oka, Phys. Rev. B 93, 155107 (2016).
[2] N. Yoshikawa et al., arXiv:2209.11932.

 

2. 吉岡 克将 氏(NTT物性科学基礎研究所 量子固体物性研究グループ)

【題目】
テラヘルツエレクトロニクスを用いたグラフェンにおける超高速光電変換過程の計測

【概要】
超高速かつエネルギー効率の高い光-電気変換は次世代の超高速通信に不可欠な要素技術である。光熱電効果を利用したグラフェン光検出器は、ゼロ暗電流で動作しかつ200GHzを超える動作速度を達成できるとの期待から、新たな光電変換素子として有望視されている。しかしながら、その期待とは裏腹にこれまでの実証動作速度は約70GHzに留まっていた。そこで我々は、オンチップTHz分光法[1]と酸化亜鉛(ZnO)ゲート構造[2]を用いて動作速度の制限を克服し、グラフェン光検出器の動作速度が220GHzに達することを示した。さらに、光電流のダイナミクスを詳細に調べることで、グラフェンにおける光電変換過程の全貌を定量的に明らかにすることに成功した[3]。
[1] K. Yoshioka et al., Appl. Phys. Lett. 117, 161103 (2020).
[2] N. H. Tu, K. Yoshioka et al., Commun. Mater. 1, 7 (2020).
[3] K. Yoshioka et al., Nat. Photon. 16, 718–723 (2022).

 

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事前登録用フォーム:https://forms.gle/JENSin5x1c4ztTrv5

 


(公開日: 2022年12月02日)