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ポータブル超強磁場装置PINKとシングルショット量子ビームを利用した超強磁場研究の新展開

日程 : 2022年3月31日(木) 12:15 pm - 1:15 pm 場所 : オンライン(Zoom) 講師 : 池田暁彦 所属 : 電通大基盤理工 主催 : 量子物質研究グループ 世話人 : 松永隆佑 (63375)
e-mail: matsunaga@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

1000テスラ級の超強磁場におかれたスピン1/2のゼーマンエネルギーは温度換算で室温を遙かに超える。この超強磁場環境で物質の磁気モーメントを自在にコントロールすることにより、相互作用の強い系における非自明な物性を解明したり、物質の新規電子磁気状態を発現させたりすることができる。東大物性研では、破壊型磁場装置として最大300テスラ発生可能な一巻きコイル2台と、新型コンデンサーバンクによる電磁濃縮法装置を2台有し、世界でも突出した超強磁場研究施設といえる。近年、新型コンデンサーバンクをもちいて電磁濃縮法による世界最高1200テスラ発生に成功した[1]。さらに近年のユニークな研究展開として新測定手法開拓が進み、多様な独自手法による、電気抵抗、磁化、磁歪、超音波などのマクロ物性評価手段が利用可能となってきた。今後、これらの手法を用いた100-1000テスラの利用が拡大し、超強磁場科学が発展することが期待される(例として[2- 6])。
一方で近年、様々なシングルショット量子ビーム実験が可能となった。これは、超強磁場にミクロプローブを持ち込むことが初めて可能となったことを意味する。しかし、従来の100テスラ装置は重厚長大で、新型量子ビームと組み合わせることは困難であった。そこで我々はポータブル超強磁場発生装置PINK-01を開発し、77テスラ発生に成功した。さらに、これをX線自由電子レーザー施設SACLAに持ち込んで実験を行い、世界最高77テスラでのX線回折実験に成功し、低温78KでのX線回折実験にも成功した[7-9]。現在、より強磁場低温での実験を可能とし、対象物質を広げることを目指し、PINK-02を理研と共同で開発中である。PINKは小型、ポータビリティ、総エネルギーが小さい、制御性が好い、など、従来の超強磁場装置にはない美点を多く持つ。X線自由電子レーザーにとどまらず、テラヘルツシングルショットパルスなどの新規量子ビームと組み合わせた超強磁場研究の新展開を目指しており、その展望を議論したい。
本研究は、物性研松田康弘研、理研SACLAビームライン開発Gとの共同研究である。PINK-01は東電記念財団と科研費挑戦開拓のサポートを受けて開発された。PINK-02はSACLA基盤開発プログラムのサポートを受けて開発中である。

[1] D. Nakamura, A. I. et al., Rev. Sci. Instrum. 89, 095106 (2018)
[2] Y. H. Matsuda, A. I. et al. Nat. Commun. 11, 3591 (2020)
[3] D. Nakamura, A. I. et al., Phys. Rev. Lett. 127, 156601 (2021).
[4] A. Ikeda et al., Phys. Rev. Lett. 125, 177202 (2020).
[5] A. Ikeda et al., arXiv:2201.02704
[6] A. Ikeda et al., Rev. Sci. Instrum. 88, 083906 (2017).
[7] A. Ikeda et al., arXiv:2202.05406
[8] A. Ikeda et al., unpublished
[9] A. Ikeda et al., unpublished

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(公開日: 2022年03月11日)