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らせん状π共役分子の合成とキラル分子機能の創出

日程 : 2026年5月13日(水) 2:45 pm - 3:45 pm 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 講師 : 廣瀬 崇至 所属 : 東京大学 物性研究所 附属物質創成研究センター 世話人 : 川畑 幸平・高木 里奈講演言語 : 日本語

有機化学における精密な分子合成技術は、望みの物理的・電子的機能を持つ「機能性マテリアル」をボトムアップで設計するための強力なアプローチである。分子構造を原子レベルで設計し、標的とする電子状態を創出できる点は、未踏の機能探索において極めて有効である。特に、空間的に広く非局在化する特性を持つπ共役電子は、優れた酸化還元特性や電荷移動特性を実現する観点から有力な電子状態である。近年、このπ共役系にらせん状のキラリティを組み込んだ分子の合成技術が急速な発展を見せている。講演者は、有機合成化学の観点から単一分子の電子状態を精密に設計し、それらを大きな分子間相互作用を介して規則集積させることで、次世代の魅力的な機能材料が創出できるとの考えに基づき研究を展開している。

本講演では、我々が近年合成に成功したらせん状化合物と、その特異な電子状態に関する最新の成果を紹介する。具体的には、π拡張型らせん状分子において、らせん中心部分のpolyene状電子状態に由来する狭いHOMO-LUMOギャップ(近赤外光応答性)を見出し、らせん状分子ワイヤーとしての機能発現への展開について述べる。また、らせん状に歪んだキラルな電子状態と遷移電気・磁気双極子モーメントに起因した、左右円偏光の選択的な吸収・発光特性について解説する。さらに、らせん末端部位を化学修飾することで、電子および正孔を一次元的に伝導するFace-to-Face型のカラムナー配列へ自己集積させることに成功した知見を報告する。

最後に、有機化学、物理化学および量子化学の融合的な観点から、キラル分子性物質を用いた物性開拓研究の今後の展望について議論したい。


(公開日: 2026年02月04日)