有機導体で実現する質量ゼロのディラック電子系:発見から最近の新展開まで
こちらから事前登録をお願いします 講師 : 田嶋 尚也 所属 : 東邦大学理学部物理学科 世話人 : 森 初果 (63444)
e-mail: hmori@issp.u-tokyo.ac.jp講演言語 : 日本語
グラフェンの発見から約20年。質量ゼロのディラック/ワイル電子は、いまや多くの物質において実現しうる電子状態として広く認知されるようになった。光錐状の特異な分散(ディラックコーン)が上下で突き合わさり、「点」(ディラック点)で接することで電子質量がゼロとなる。この幾何学がもたらす物理は、凝縮系物理の重要なテーマである。
その中でも、有機導体 α-(BEDT-TTF)2I3は世界で初めてバルク系で質量ゼロディラック電子を実現し、フェルミ準位がディラック点に一致するという他の物質が敵わない特徴を備えている[1,2,3]。一方で、この物質は常圧・低温では電荷秩序を伴う絶縁体だが、静水圧の印加により質量ゼロのディラック電子系へと“量子相転移”する。電子相関の強さを圧力制御できる点も、この系の魅力の一つである。
本講演では、質量ゼロディラック電子系α-(BEDT-TTF)2I3 がどのように発見に至ったのかを振り返りつつ、ディラック「点」が生み出す多彩な物理、ディラック点がどのように“不安定化”するのかについて、姉妹物質α-(BETS)2I3 を含め輸送現象を中心に紹介する[2-8]。さらに近年、この系は新たな局面を迎えつつあり、カイラル対称性の破れを伴う3次元ディラック半金属状態が低温で実現することも明らかになってきた[9, 10]。本講演では、この量子異常に起因する輸送特性についても最新の結果を交えて論じたい。
参考文献
[1] S. Katayama, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 75, 054705 (2006).
[2] K. Kajita, et al., J. Phys. Soc. Jan. 83, 072002 (2014).
[3] N. Tajima, et al., J. Phys. Soc. Jpn., 75, 051010 (2006).
[4] T. Osada, J. Phys. Soc. Jpn. 77, 084711 (2008).
[5] N. Tajima, Phys. Rev. Lett. 102, 176403 (2009).
[6] Y. Unozawa, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 89, 2137902 (2020).
[7] Y. Kawasugi, et al., Phys. Rev. B 103, 205140 (2021).
[8] K. Iwata, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 92, 053701 (2023).
[9] T. Morinari, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 073705 (2020).
[10] N. Tajima, et al., J. Phys. Soc. Jpn., 92, 123702 (2023).