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キラリティが駆動する有機超伝導体の巨大スピン軌道物性

日程 : 2025年7月29日(火) 3:00 pm - 4:00 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第一会議室 (A636) 講師 : 佐藤 拓朗 氏 所属 : 分子科学研究所 世話人 : 橋坂 昌幸 (63305)
e-mail: hashisaka@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

スピン軌道相互作用が空間反転対称性の破れと結びつくとき、物質中の電磁気応答に非相反性が誘起される。このスピン軌道相互作用に基づいた解釈は、ポーラーな系の非相反応答をよく記述できるが、同じく反転対称性を破る系であるキラルな空間群に対しては、その非相反応答を説明しきれないことが分かってきている。キラルな有機分子中で観測されたキラル誘起スピン選択性(Chirality-induced spin selectivity : CISS)はその典型例であり、スピン軌道相互作用が無視できるほど小さい有機系であるにも関わらず、無機系を凌駕するほどの巨大なスピン偏極流が生成される[1]。このことから、キラリティに固有な有効スピン軌道相互作用の存在が強く示唆されているものの、それを定量的に検証した実験は非常に限られている。
本セミナーではキラルな結晶構造を有する有機超伝導体-(BEDT-TTF)₂Cu(NCS)₂ における非相反電荷応答に着目し、キラリティによって駆動される巨大有効スピン軌道相互作用を実証した実験結果を紹介する[2]。CISS効果一般の現状を整理しつつ、有機キラル超伝導における最新の実験と今後の展望について議論したい。

[1] R. Naaman, et al., Nat. Rev. Chem. 3, 250 (2019).
[2] T. Sato, et al., Phys. Rev. Res. 7, 023056 (2025).


(公開日: 2025年07月11日)